Vol.274:拉麺 mellow


 今回取材するのは2022年4月15日に名古屋市でオープンした「拉麺mellow」。店主は愛知県長久手市の人気店「ラーメンめろう」の創業者で、今回名古屋市で新たな道を歩み始めたばかりだ。個性派揃いの東海ラーメンシーンの中でも一際異彩を放っている存在で、お店のSNSを見ただけでもその個性爆発のイメージが強く印象に残るお店だ。どんな店主なのか以前から興味があったので、今回の取材がとても楽しみだった。「拉麺 mellow」古澤店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「愛知県名古屋市の中村区です。」

 

- ラーメンは昔から好きだったんですか?

「社会人になって名古屋の会社で働いていたんですが、その会社が東京でも事業を展開しようということになって、僕が常駐のスタッフとして東京へ行くことになりました。その頃にラーメン食べ歩きを始めたので、名古屋より先に東京で食べ歩きを始めました。」

 

- その頃はいつか自分で何かしたいという考えはあったんですか?

「具体的に飲食店をしたいとかはまだ無かったんですが、サラリーマンは自分にはあまり向いていないなという気持ちはありました。」

 

- ラーメンを作る側になるきっかけは?

「東京で食べ歩いていく内に『ラーメンって面白いな〜』と思うようになりました。小さな個人店が多くて、ネットでは個人で独立してやっているお店の方が評判良くて行列ができていました、それまで並んで待ってまでラーメンを食べるという経験すら無かったのですが、自分も自然とそういう店ばかりに行くようになってて、自分で好きなものを作って、自分の好きなものに囲まれて、自分の好きな空間で仕事できるのがいいなと思いました。」

 

- ラーメンに興味をもってからは?

「関東内で会社がさらに移転することになり、このままだと会社を離れづらくなるなと思ってそのタイミングで会社を辞めることに決めました。もうラーメン屋をしようと決めていたので、東京に残ってラーメンの修行をするのか、名古屋に戻ってするのかを考えて、僕は名古屋へ戻ることを選びました。」

 

- 名古屋へ戻った理由は?

「まだ自分にはそんなに自信がなかったのが大きな理由ですね。名古屋だと実家に住みながら集中して修行ができると思いました。それが2007年頃です。」


- どこかで修行をしたんですか?

「当時はまだ鳥居式ラーメン塾初期のお店が東海で増え始めた頃、ラーメン学校的なものが出始めた頃で自分はそんな存在は全く知らなくて、ラーメン屋になりたければ修行するものだと思っていました。僕が東京で気に入ったお店が"べんてん"だったんです。それまでつけ麺も食べたことなかったんです。べんてんからラーメンに嵌ったので、東京での食べ歩きも魚介豚骨系でつけ麺というのが基本になっていました。二郎とか色々食べたんですが、やっぱり一番好きだったのが魚介豚骨系でした。」

 

- 当時の名古屋ではまだ魚介豚骨もつけ麺もあまり無かったですよね?

「晴レル屋さん(麺の坊 晴レル屋)、ぎんやさん(豚そば ぎんや)が濃厚つけ麺ブームを起こしていた頃ですね。当時名古屋と近郊でつけ麺を食べるならこの2店というイメージでした」

 

- 修行店に選んだ店は?

「ぎんやです。つけ麺があって、魚介豚骨なのが一番の理由ですね。ぎんやの落合大将が焼き鳥屋さんやイタリアンの経験がある方なので、限定麺で手の込んだものをいっぱいしていたのでそういうのも学びたいと思っていました。」

 

- 初めての飲食の仕事はどうでしたか?

「僕は楽天的な性格なので、なんとかなるというか、怒られても響かない性格なんです。未経験なので怒られることも多かったんですが、いつかはできるようになるだろうと思って修行を続けていました。それから2年目くらいでぎんやを離れることになりました。」

 

- 離れた理由は?

「落合大将から『技術的なことは一通り教えたけど、まだ意識みたいなところはプロに達していない。だからそれをベースにしてもっと他店で経験を積むのもいいし、自分でやってみるのもいいと思う』とアドバイスを頂きました。」

 

- その時の古澤さんの気持ちは?

「今のままではまだ自分ではできないと思っていたので、晴レル屋の2号店"晴れやか"で一年くらい働かせてもらい、晴れやかで店長をしていた方が独立した店でも1年間ほどお手伝いをしていました。その間にイタリアンやフレンチのレストランも展開しているデザートの某有名店でも働いて色々勉強させてもらっていました。もう充分ということではないんですが、その頃には次は自分の店だなと考えながら働いていました。」


2012年3月30日オープン


- 創業店の場所に長久手を選んだ理由は?

「名古屋で長く生きてきて、人が集まる所もだいたい分かっていました。あの場所は長久手ですが、藤ケ丘という駅から歩ける距離。藤ケ丘は終点の駅で、大学生が多く使う駅なんです。藤ケ丘駅のような終点の駅を中心に探していて、家賃とか考えてあの場所に出会いました。前が鰻と蕎麦のお店だったらしくて、全部が全て揃っていたんです。もうスープを炊くところさえ作ったらすぐに営業を始められるという物件だったんです。ぎんや落合大将にも相談してから、少し改装して始めることにしました。2012年3月30日にオープンしました。」

 

- 屋号「ラーメンめろう」の由来は?

「現店舗はアルファベットのmellow表記でしていますが、最初は『ラーメンめろう』で始めました。なんとなく3文字がいいなと考えていて、mellow(めろう)という単語が思い浮かんだんです。英単語としての意味は『年月が経って味が出た・芳醇な・まろやかな』などの意味があって、自分の作ろうとしているラーメンにも合うなと思いました。当時、アルファベットにしなかったのは、何の店か伝わりづらいと思ったんです。それで親しみやすさも込めてひらがなで"めろう"としました。」

 

- 自店で提供する商品は迷いなく?

「はい。迷わず魚介豚骨を中心ですると決めていました。つけ麺と汁そばは必ずラインナップして、その頃にまぜそばブームがあったので、汁なしもすぐに追加しました。」

 

- 作っている商品への迷いは?

「べんてんさんが好きで始めたんですけど、自分の作るラーメンはべんてんさんとはどんどん離れていっていたので少し迷いがありました。でも今はこれが受けると思って取り組んでいました。自分の理想のラーメンとは別に、僕はお客さん目線を大切にしているんです。」

 

- 「お客さん目線を大切に」とは?

「僕は食べ歩きが好きで、ラーメン店主さんの中でも休みの日にかなりラーメンを食べている方だと思うんです。だから一般客目線を大事にしているところがあります。そこまでラーメンに興味は無いけど、なんとなく本とかで見つけたラーメン屋に来たお客さんがどういうラーメンを求めているんだろうと考えています。だから濃厚つけ麺が全盛の当時はそこに合わせて濃厚つけ麺をして、でも自分の味も出していきたいので、少し自分のテイストも加えているという感じです。SNSも凄くチェックしています。」

 

- 食べ歩きは幅広く?

「幅広くですね。清湯、二郎、ラーメン以外も食べます。他ジャンルならラーメンと同じ価格帯、同じ土俵のものを意識しながら食べるようにしています。直接のライバルではないんですけど、食後の満足度で負けないようにしなくてはと意識しながら色んなものを食べています。」


- 2022年4月に名古屋市へ移転した経緯は?

「2人目の子供が産まれてから少し広いところに住まないといけなくなってきました。家だけ引っ越してあの場所で続けるよりも、家と店が一緒、店舗兼住居を考えるようになりました。それでこの物件と出会って、ここで住みながらしようと決めました。長久手の店(創業店)は『めろうを引き継いでやりたい』という人が見つかったので、しっかり教えてから引き継ぎをしました。」

 

- 現店舗で屋号を本来のmellow(拉麺mellow)にしたんですね。

「はい。長久手で10年間やってきてもうウチを認識してくれている方も多いですから。創業店は居抜きで始めたので、自分がラーメン屋をしたいと思った本来の目的の『好きなものに囲まれて、好きなテイストで店作りをできる』が100%はできなかったんです。でも現店舗はスケルトンの状態(店舗の内装設備がない状態)からだったので、ゼロからカウンターの高さなど全て好きなようにできました。それならばと店名表記も本来の意味のmellowにしました。」

 

- 自家製麺はいつ頃から?

「長久手時代の5年目頃から始めました。気の合うラーメン屋さんと集まっている時、僕以外の店はほぼ自家製麺だったので、最初はその方達に教えてもらいました。」



- 多くのファンを魅了している限定麺など、色んなことに積極的に取り組んでいますね。

「自分が作って楽しくて、その楽しさがそのままお客様に伝わるのが一番いいかと思います。限定麺もわざと分かりにくい名前、味が想像できない名前にすることがあります。それを注文する時点でお客様も期待してくれているのが伝わってきます。他にも告知が営業直前だったり(笑)。そんな状況含めてmellowを楽しんでもらえたらいいなと思っています。」

 

- 古澤店主が大事にしていることは?

「ラーメンに限らず外食は味の好みは人それぞれあるにしても『家では作れないものを食べてもらう』というのが大事だと思っています。それがウチにしかない突飛な発想の限定麺や、サイドメニューでもクリスピーローストポークやカオマンガイといった普通のラーメン店にはないものをやっている理由の一つです。自分もそこに挑戦するのが楽しいし、『お客さんも楽しんでくれよ!』という意識に繋がっています。

 

 ラーメンで言うなら清湯や乾物出汁のものは比較的家庭で自家製ラーメンとしてやりやすいと思うのですが、濃厚系、特に濃厚魚介豚骨は揃える材料・製法・作業の大変さ、家で作るには最もハードルが高いものの一つだと思うので、それが濃厚魚介豚骨をやり続けるモチベーションになっていますし、そういう意味では今後は濃厚魚介豚骨の地位を向上したいという考えに繋がっています!」


◆店舗情報

拉麺 mellow

愛知県名古屋市緑区徳重5-1301

twitter:https://twitter.com/ysk2630

Facebook:https://www.facebook.com/ramen.mellow

instagram:https://www.instagram.com/ramenmellow/

オープン日:2022年4月15日

 (取材・文・写真 KRK 令和4年12月14日)