Vol.07:あす流

なんで認めてもらえないんだろう?明日が見えない我慢の日々を耐え、いつか来るだろうXデーを待っていた。そして2013年1月、あるイベントに出陣しついにその光を放てる舞台に立つことになる。イベントを通して初めてあす流に出会った数百人がこう思っただろう。「この店は一体どこにいて、何をしていたんだ?」。皆があす流に恋をした瞬間だ。それ以降の活躍はもう説明する必要も無いだろう。思い描いていた未来に向かってしっかりと歩み始めた今、何を思い、何を語ってくれるんだろう?あす流 山本店主(途中から女将さん参加)にKRK直撃インタビュー!


─屋号の由来は?

特に意味は無いんですが、あ行から考えて最初がいいかなって。ひらがな&漢字の組み合わせで考えていて、僕はあまのじゃくみたいな性格なので、本当は『流れる』って漢字はあまり屋号につけない方がいいみたいなんですが付けて、『2階でするのもあかんで』って言われたけど決めたし。」



─自信はあった?

「『生活はできるかな?』ってくらいでしたね。ただ、お客さんも全然来なくて、オープン1週間目の頃、3日間でお客さんがゼロって時もありましたよ。昼夜営業し、夜中3時頃までしていた時もあった。だけど誰にも教えを請わず、黙々としてましたね。今でも孤独が好きですしね。お客さんが来なくても、それでも楽しかった。一人でしてるのが楽しかった。」

─そして?

2年~3年目になると、お客さんも増えてきて徐々に認められてきた。ある時、関西一週間って雑誌の醤油部門で準GPに選ばれました。もう9年前くらいの雑誌ですね。しかしあす流の売りの塩じゃなく、醤油が選ばれたのがとにかく悔しかったですね。なので受賞の電話かかって来た時、『塩じゃなかったらいらん!』って最初、断ったくらいですからね。」

 

─更に塩を高めていく?

開店頃から注文率は塩がずっと多かったです。最初の頃の味はとにかく化調まかせだった。まだ出汁のとり方がイマイチわからなかったし。僕は中華料理から来たので化調が当たり前な感覚だったけど、ラーメン屋さんやり始めてから無化調って言葉を初めて聞いたし、化調が駄目って動きも知りましたね。『入れたらなんであかんの?』って思ってましたが、それから代わりに何でグルタミン酸をとったらいいか?とか考え、昆布を多く入れたりとかして、その結果、しっかりしたラーメンの味になってきましたね。そうしてる内に面白くなってきて、ラーメン作りにハマリだしてきました。スープができてくると、麺も合わせるようになる。オープンして1年半目の頃から麺屋棣鄂(公式HP)の麺を使い始めました。いろいろ試して、真空麺を使い出すことに。」

 

─そして?

そして、その後、関西1週間で今度はつけ麺部門で賞を頂きました(笑)。電話が来ると『また?塩で受賞じゃないんですか?』ってまたショックを受けましたね。それでちょっとの反抗ですが、その雑誌が発売された日からつけ麺提供をやめました。当時は塩が認められないのが本当に悔しくて、悔しくて。」


塩ラーメン


─ 初めてのイベント参加へ?

女将(ここからインタビューに参加「これまで自分たちだけでしてきたお店なのでイベント参加への抵抗感はありましたが、ずっとウチの味を認めてもらえない我慢の日々が続いていたので、『大勢の人にウチの塩を食べてもらって認めてもらいたい』って気持ちが強かったです。イベントを通して多くの新規のお客様が来てくださって、どういう評価をしてくださるのかが知りたかったんです。当時のブログにも書いていますが、イベントは最初で最後、らの道だけって決めていました。(参照:イベント初日のブログ記事)」

 

店主「とにかく挑戦をしてみたかったですね。」

 

─ 最初で最後のイベント参加はどうでしたか?

店主「イベント前は並びがあるのは週末くらいでした。お客さんは近所の人がほとんどだったし、客との会話もなかった。SNSもしてなかった。らの道までラヲタって言葉も知らなかったです。」

 

女将「らの道の3ヶ月間、他府県から大勢のお客様がいらっしゃったので、全ての皆さんに満足してもらって帰ってもらいたいって気持ちで頑張りましたね。3ヶ月間、プレッシャーとか凄かったですが、『やるからにはやり切らないと』って思ってました。」

 

─ イベント後?

店主「幅広い客層の方に来て頂く様になり、念願の塩で賞も頂きました。やっと世間一般に認められたって感じでしたね。」


─そして2014年2月、らーめん鱗をオープン。

女将「最初、あす流の2号店を出そうと思っていたんです。だいぶ前から考えはありましたね。あす流は店内が狭くて、席数も少なくて不便でしたからね。違うブランドって考えは最初はなかったです。」

 

─屋号は?

店主「メッチャ悩みましたね。漢字一文字でってのは最初から考えていて、当時、東京でも漢字のシンプルな屋号の店とかが話題になってたり。塩ラーメンの液面が背脂でボコボコってなってるのを見て、『魚のうろこみたいだな~』ってことから『鱗』って漢字が思い浮かびました。」

 

─鱗の場所?

女将「最初、『市内で試したい』って考えもあったんですが、ちょっとまだ早いか?背伸びしすぎかな?って迷いました。市内某所で見つけていた物件があったんですが、そこはかなり広かったし『まだ早いかな?』って思い、結局、後から見つけた近くの茨木市の物件の方に決めました。」

 

─内装は?

女将「『あす流でこうしたかった!』ってなかなか叶わなかったことを、全て実現させたのが鱗です。2号店には夢が詰まっています。そして、それを更に復習し学習したのが3号店です。」

─鱗の商品は?

店主「メインのラーメンはだいぶ悩みました。塩なら背脂で?この麺で醤油しようか?とかいろんな考えを持っていた。実はあす流のオープン当初に出してた塩ラーメンは背脂を入れていたんです。当時、清湯で液面が油っこくなるとクドくなるので、大葉でさっぱり感を出そうと入れていたんです。その後、背脂を抜いても大葉は香りがいいので残してる。だから鱗の塩に刻んだ大葉を入れたら、あす流のオープン頃の塩ラーメンのような感じになるんですよ。ただ、当時は『清湯の塩に背脂なんて合わない』っていろんな人に言われ続けていて、結局やめたんです。僕の中では『絶対美味いのに!』ってのが頭にあったので、そんな流れで、鱗をオープンの時、『塩なら背脂を入れたい』ってのを強く思っていて、ついに実現させることができました。あす流のオープン当初は『なんで?』って多くの人に言われていたのに、数年経って自分の味が認められだすと、周りからあまり何も言われなかったですね。

─鱗オープンをオープン当日まで内緒にしていたのは?

女将「あす流ってブランドの力を借りず、鱗だけで頑張ってみたかったんです。昔からなかなか認めてもらえず悔しい思いをいっぱいしてたので、鱗では鱗単独で最初からしっかりと認めて欲しかったんです。今でもあす流で鱗の宣伝は一切しないのは、あす流の別ブランドとしてじゃなく「鱗を認めてもらいたい」という理由です。」

 

─鱗をオープンして?

店主「鱗はラーメン&やきめし、庶民的なものをお腹いっぱい食べてもらえるって店。誰かにあれこれと分析され評価されるとかじゃなく、幅広い客層に愛される標準なラーメン屋さんを目指しています。鱗がどうなるか分からなかったので、3号店は最初は頭になかったですね。」

 

女将「今のお客さんはカップル、女性が多くなっています。幅広く来てもらっていますね。」


─あす流のカードとかのデザイン?

女将「私がしています。全て独学ですからメッチャ時間かかってるんですよ。自分の店のものだから、自分でしたかったんです。」

 

─趣味?

店主「特に無いです。食べ歩きもあまりしないです。」

 

女将「私は演歌が好きで、演歌全般が好きです。あす流の店内で流してる演歌は私の趣味ですね(笑)。落ち着くんです。特に石川さゆりさんが好きで、この間、コンサートにも行ってきました。」

─絆グループ?

店主「最初、麺や マルショウさんと仲良くなりました。そこからマルショウさんが烈火さんとか連れてきて、たけ井くんなど繋がりが広がっていきましたね。マルショウ 田部店主とはラーメン屋さんだからじゃなく、育ってきた境遇、考え方とか似てる部分が多かったんです。絆グループは何か一緒にするってグループではなく、単に仲良いだけです(笑)。」

 

─意識してる店は?

店主「意識してる店は特に無いですね。自分の道って感じで、周りにはあまり興味は無いです。ただ、清乃さんの「塩」や紡さんの「醤油」は好きですね。」

─2015年8月23日、メニューをリニューアルしたのは?

店主「海老醤油じゃなく、普通の醤油も美味しいの作れるってのを認めてもらいたかった。9年前のあす流オープンの頃は海老を使った醤油ラーメンは関西ではほとんど無かったが、今では多くの店が海老を使っているので。僕は人と違うことをしたい人間なので、周りが海老を使い出すと、違うものにチャレンジしたくなりました。そして注文率でも海老醤油が塩を超えたことがなかったのも理由の1つですね。普通の醤油ラーメンで勝負したくなりました。」

 

─新しい醤油は?

店主「ギリギリまで2種類あったんです。どっちにしようか、最後まで迷っていましたね。自分はもう1つの方が好きだったけど、女将やスタッフの二人が今の醤油派で『あす流らしい、優しい感じ』って言っていて。もう1つの方は醤油がシャープに立っている感じでした。塩では自分の意見を曲げないけど、醤油は皆の意見を聞くことにし、今の醤油を新メニューとして加えることにしました。」



─接客で心がけてること?

女将「スタッフには大きな声と笑顔を大事にしてもらっています。誰でもできることなので、まずは『それがきっちりできる』ってことが大事。それができたら『向上心がある』ってことなので。接客を初めてする人でもやる気と向上心があれば、後から伸びることが多いです。」

 

─ラーメン作りで、大切にしてること?

店主「シンプルにやることを心がけています。盛り付け、調理、全てシンプルにしてる。シンプルの美学で。」



<店舗情報>

あす流

大阪府高槻市紺屋町8-30 2F

あす流Twitter:https://twitter.com/asuryu40

鱗 Twitter:https://twitter.com/uroko40


(取材・文・写真 KRK 平成27年9月6日)