Vol.26:極麺 青二犀


 その店は大阪府吹田市にある。最寄りの駅から遠いし、商店街や商業施設が近くにあるわけでも無い。しかしこの店はいつも混んでいて、売り切れも早い。屋号は"極麺 青二犀"。

 大阪最高峰の1つと言っても過言でない醤油清湯を筆頭に、鶏白湯から担担麺、そして絶品の焼飯。とにかくどのメニューも満足度が高く、何を注文するか困ってしまう店だ。瞬く間に大阪屈指の人気店に上り詰めた店だが、この店の出現はとにかく「突然に現れた」って印象で謎も多い。店主とゆっくり話せる機会を頂いたので、いろいろ聞いてみようと思う。"極麺 青二犀"森山店主にKRK直撃インタビュー! 


- 出身は?

「兵庫県朝来市です。有名な竹田城がある所です。高校を卒業するまでいました。大学に進学してから尼崎市へ出てきました。」

 

- ラーメンとの出会いは?

「大学に入って、某ラーメン屋でバイトし始めました。そのままその店でバイトから社員になって約10年ほどお世話になりました。大学を卒業してすぐに結婚して、桜ノ宮に引越ししました。店へも通える距離でした。その頃はぼんやりとですが『将来は居酒屋したいな』とか考えていましたね。

 当時、働いてたラーメン屋はとにかく忙しくて、1日に多い時は通し営業で800人くらいお客さんが来てくださっていたので。毎日、ひたすらにラーメンを作ってるだけでしたから。それで、それより『1対1でお客さんとワイワイと楽しめる居酒屋がいいな~』と思っていました。」

- ターニングポイント?

「その店で働いてる時、"魔法のレストラン"の取材を受けたんです。その時、僕は料理長をしていて、夏の限定メニューを考えるみたいな企画でしたね。その頃は東心斎橋店にいて、東心斎橋界隈の店がそれぞれ夏の限定を考えるみたいな。1週間、ずっとカメラが付いていて。ウチはペラペラのスープだったので取材で恥をかかないように、その時に初めて豚骨を炊いたんです。全然知識無かったんですが、それがメッチャ美味かったんですよ。本気で炊いたスープが本当に美味かったし、2日目になると更に美味くなる。それで『ラーメンって面白いやん!』って初めて気づいたんです(笑)。10年前くらいの話です。」


- ラーメンに興味を持ってから?

「ラーメンに興味が出てきて、それから他の店を食べ歩きをするようになりました。近所のラーメン屋さん、総大醤さん、天神旗さん、輝さんとかを食べ歩いていて『やっぱりラーメンって美味しいな~』って。その中でも一番好きだったのが総大醤さんでした。それまで豚骨ばかり食べていたので、醤油ラーメンを食べたことなかったんですけど、総大醤さんの醤油ラーメンを食べて『あ~、醤油ラーメンってこんなに美味いんや!』と衝撃を受けました。

 ちょうどその頃、働いてた店があまり忙しくなくて、ちょっと未来のことも考えるようになってきていました。そしてその店を辞めることに決めた、ちょうどその時に総大醤さんがスタッフ募集をしていて、面接に行くとすぐに採用してもらえました。それから総大醤さんでは4年ほどお世話になりました。最初から独立志望があったので、修行のためです。その時はもう『醤油ラーメン、清湯で自分の店をしたい』と決めていました。」

 

- 独立開業へ向かって?

「最初は10年くらいは修行するつもりだったんですが、お金も十分に貯まってきたので4年目の頃に独立を決心しました。その店での2年目頃には、自分の店で出すラーメンは自宅で試作を重ねていました。」



- 自分の店の場所は?

「辞めるちょっと前からチャリンコで探し始めました。吹田市でってのは決めていましたね。まだ江坂は今のような激戦区ではなくて、当時は"えぐちさん"があったくらいですね。チャリンコでずっと隅から隅まで走って、不動産屋さんにもいろいろ紹介してもらったりして探していました。"でっかい箱"や"建物の2階"とかはあったんですけど、僕が探していた路面店があまり無い。あってもクリーニング屋さんの跡地とか。知り合いの内装屋さんに良い物件があれば、見てもらったりしていました。」

- この場所を見つけたのは

「総大醤には僕の自宅からチャリンコで通ってたんですよ。片道12kmくらいを毎日。で、いつもこの前を通っていたんです。営業してるのか分からない中華料理屋さんでしたね。食べたことは無かったです。それである日、前を通ったら『閉店』と貼り紙していました。でも駅から遠いし、僕は『この場所はないな~』と思っていました(笑)。

 一応、一緒に探してもらっていた内装屋さんに確認してもらったら、『メッチャええやん!』って(笑)。多くの店と関わってきているその内装屋さんには見えるらしいんですよ。それで不動産屋に連絡しました。不動産屋からの条件など待ってる間にも、僕は茨木市や梅田とか探し続けていたんですが、いろいろ見て回ってる内にココが凄く良くなってきたんです。よそと比べたら(笑)。そして、この場所で契約しました。」

 

- 屋号は?

「屋号はね、総大醤で働いてた時から考えていました。"未熟者"みたいな言葉を探していたんです。僕、漫画が好きなんですよ。それで"ワンピース"と"あひるの空"って漫画の中で"青二才"という言葉が出てきてて、『青二才って言葉、メッチャいいな~』と思い、それで決めました。ただ、弱々しく見えるので、青二才じゃなく、少し感じを変えて"青二犀"にしました。力強いイメージがある動物のサイ(犀)にしました。」

- "極麺"は?

「僕は思わなかったんですが、内装屋さんが『青二犀だけじゃあかんわ。何か付けよう』って。それでしばらく考えてたら、内装屋さんが『良いのが思いついたわ』ってことで、『極麺』が付くことになりました(笑)。」

 

- 自家製麺?

「製麺は前の店の先輩に習ったり、大和製作所の製麺機の勉強会が江坂であって何回か行ってました。ただ、水でちょっと問題あったんですよね。この店の水がメッチャ硬水だったんです。この浄水器の水がメッチャ美味かったんです。今まで働いてた店より抜群に美味かった。しかし麺がとてもダレやすくて安定せず困っていたので、製麺機のメーカーさんに電話で相談したんです。それでいろいろ話してると、『あっ、水やわ。ミネラル多いから水が硬いんやわ。』って。それから軟水器をいれたら問題解決しました。」

- メニューについて。

「最初は醤油、塩、担担麺、そして焼飯、明太子、餃子でしたね。とにかく清湯がしたかったですから。限定で鶏白湯もしてたら評判良かったので、レギュラーに後から加えました。担担麺は『選択肢が多い方がいいだろう』と思い、担担麺が名物だった中華料理屋で働いてた先輩から作り方を教えてもらったんです。」

 

- オープン前の宣伝は?

「オープン準備が忙しくて、ほとんどできてなかったですね。ポスティングとかもしていません。店の前でビラを配る程度でしたね。それでも口コミのお蔭で、最初から順調でした。近所の人たちがメッチャ来てくれました。」



- 店舗展開は?

「今は全く考えていないです。僕のやりたいラーメンは、人に任せることができないです。」

 

- 森山さんのラーメンへの拘り?

「一切手を抜かない。気を抜かない。一生勉強。まだまだ成長できる。できることなら、清湯だけで営業していけるのが理想ですね。いつか究極の清湯を作れたらいいですね。」


■KRK動画


<店舗情報>

極麺 青二犀

大阪府吹田市末広町21-53

公式Twitter:https://twitter.com/8127Monky

(取材・文・写真 KRK 平成28年3月)