Vol.41:らぁめん トリカヂイッパイ

近年、多くの実力店が集まり、かつてない盛り上がりを見せる奈良ラーメンシーンに、2014年6月、新たに1つの店が加わった。屋号は「らぁめん トリカヂイッパイ」。場所に選んだのは「奈良のラーメン激戦区」とは離れた静かな住宅街である生駒市。大阪のベッドタウンなので、夜になると人の通りも極端に減り、飲食店が厳しいと言われてる街だ。そしてトリカヂイッパイが看板商品として提供するラーメンは清湯!「無鉄砲」や「まりお流」など濃厚なラーメンが長く愛されている奈良県に「新しい流れが生まれるか?」とオープン当初から注目していたが、私の予想以上のスピードで奈良県民に受け入れられて、一気に人気店の仲間入りを果たす。以前に聞いたところ、店主は東京の有名なラーメン塾出身。いろいろ面白い話がありそうなので、話をする時間を作って頂いた。「トリカヂイッパイ」中村店主にKRK直撃インタビュー! 


- 出身は?

大阪生まれの奈良育ちです。ほぼ生駒で育った感じですね。

 

- 前職は?

「元々、3年ほど前までは整骨院を自営業でしていました。自分で17年していて、修行も入れたら20年くらいですね。」

 

- 当時、ラーメンは?

「当時はラーメンがあまり好きでなかったんです。うどんの方が好きで『ラーメンってのは胸やけする、胃もたれする』ってイメージしかなかったんです。食べるといつもしんどくなるので、あまり好きでなかったんです。」

- それが、なぜラーメンが好きに?

「きっかけは『みつ葉さん』ですね。整骨院の近くにみつ葉さんができたんです。『あそこにラーメン屋できたよ』って聞いて、食べに行ったんです。その頃はまだみつ葉さんもオープンしたばかりでガラガラでしたね。それで昼ごはんを食べに行った時にとにかく衝撃を受けましたね。今まで思ってたラーメンと全然違っていて、洋風っていうかパスタっぽいラーメンやな~って。胸やけもしないし、これは凄いな~って。それから通うことになりました。」

 

- それから? 

「それで調べていく内に、『あっぱれ屋さん出身なんだ~』って知って、あっぱれ屋さんにも食べに行きました。そこで麺がとにかく美味しくて、店の中に置いてあった製麺機にもとても興味を持ちました。『みつ葉さんもこれ使ってるんや?』って。みつ葉さんのラーメンでも『麺に惚れた』ってのもあったので。」

 

- 気持ちの変化?

「その頃はまだ整骨院をしていたんですが、いろいろ家庭の事情というか複雑なことが立て続けにあって、精神的に落ちていて体重も落ちてって頃だったんです。で、『何食べても美味しくないな~』って時に、みつ葉さんのラーメンに出会ったんです。『こんな美味いものがあるのか?』って、初めて食べた時に涙が出たんですよ。それで通う内に杉浦店主や女将さんから声をかけてもらうようになって。元々は『人に喜んでもらうことをしたい』ってことで整骨院の仕事をしていたんです。その時に『一杯のラーメンでこんなに人を幸せにできるんだ』って気付きましたね。」



- ラーメン屋をすることへ興味が?

「整骨院がだんだん厳しい状況になっていたし、家の事情もあったし、何か奮起して『このままで終わらない』って気持ちがありました。20年も整骨院をしてたので、人生一回だけだし『全然違うことをしてみよう』って思いました。その時に頭に浮かんだのが『ラーメン』でした。」

 

- そして?

「杉浦さん(みつ葉店主)に電話させてもらいました。『ずっと通わせてもらってる者です。ラーメン屋したいんです。』って話しました。それが3年ほど前ですね。整骨院を閉める前に、杉浦さんに相談させてもらいました。」

 

- みつ葉さんの反応は?

「一回話を聞いてくれるってことになり、営業後のお疲れのところ、夜中の0時頃からサイゼリアで2時間ほど話を聞いてくださいました。まず一発目に『ラーメン屋は大変やで?』って言われましたね。そして『自分の中で計画あるの?席数何席で何杯売って、どれくらい利益あるか分かるの?』って厳しく言われました。僕は何も考えてなかったので、『それをよく考えて決めないと』っておっしゃってくださいました。僕は『それでもラーメン屋をやりたいんです。』って言い、そして『みつ葉さんで修行させて欲しいです』って頼みました。杉浦さんは『ウチの現状では家庭持ってる人に給料を出すのは難しいし、修行はできない。でもやるんだったら、やり方は教えてあげれるよ』って言ってくださいました。」

- それから?

「ちょうどその頃に、僕以上に『みつ葉愛』がある中西さんと知り合ったんです。中西さんもみつ葉さんの常連で、それで連絡を取って意気投合し、一緒にいろんなラーメン屋さんに食べに行くようになりました。その時に中西さんが好きだった『而今さん』で清湯ラーメンに出会いました。食べてみて『あ~美味しいな』って。それで『みつ葉さんと全く違うアプローチで人を満足させれるものを作れるんじゃないか?』って考え始めました。どこの修行にも入らずに、『自分でオリジナルのものを作ろう』って決めました。」

 

- どう動きましたか?

「あっぱれ屋さんで見た製麺機を自分で調べてみると『大和製作所(公式HP)』って所が出てきました。それから一回、大和製作所の体験に参加して製麺の機械を使わせてもらって、『あ~、自家製麺がやっぱりしたいな~』って思いました。それで大和の学校に行こうと思ったんですが、『予約満員で半年待ちです』って言われました。そんなに待てないので他の所を調べてみると、東京の『食の道場(公式HP)』ってのが空きがあるのを見つけました。それで電話してみると『4月の最初の方なら空いてますよ』って言われたので申し込みしました。整骨院を3月いっぱいで閉めて、4月6日に東京へ向かいました。」

- 食の道場?

「石神さんは知ったんですが、講師の方では赤迫さん(無鉄砲 代表)を知ってたくらいですね。15日間住み込みで勉強させてもらいました。講師の方達は2週間で5人ほど来られてましたね。最初に『どういうラーメンしたい?』って聞かれて、『鶏の清湯でしたい』って相談しました。『それでやったらいいやないか?』って言って頂きました。最初に化学調味料とか聞きましたが、僕は『無化調、鶏、自家製麺って3本でしたい』って決めていました。食の道場では技術的なことは基礎だけでしたが、それよりも成功されてる講師の方たちとずっと一緒に過ごして、ノウハウ以上のもの、体験談など聞けました。そういうのが今は宝となっています。」


らぁめんトリカヂイッパイ(2014年6月28日オープン)


- そして自分の店?

「東京から5月に帰ってきて、6月28日にオープンしました。中西さんと二人で全く一からスタートでしたね。飲食店が初めてだったので、鶏屋さんに怒られたりしながら(笑)、寸胴何センチを何個買う?丼?コップは何個必要か?とか。中西さんが自作を続けてたので、ある程度ラーメンを作れたので、準備期間は2ヶ月ほどでしたね。」

 

- 屋号は?

「けっこう始めの段階から決めていました。東京行く前からです。漫画ワンピースのセリフ。僕の好きなシーンのセリフからです。ナミが『トリカヂイッパイ』って言ってるシーンがエニエスロビー編で使われています。」

 

- 場所?

「たまたま見つけたってだけです。2人とも生駒に住んでるので、『生駒でやりたいな』って思ってたんです。『生駒は飲食店するのに難しい』って言われてたんですが、『難しいなら難しいところでしよう』って気持ちでしたね。ただ、駐車場がもうちょっと欲しいですね。」



- トリカヂイッパイのラーメン?

「最初、塩が納得いくものができなくて『まずは醤油一本でいこう』って決めました。でも醤油ラーメン一本だけだと選択肢が少なくて。それで『もう1つ、別の醤油使ってしよう』って思いました。元々、片上醤油さん(公式HP)が昔からの知り合いだったので、『何かの縁だし、片上さんの醤油を使ってみよう』って思いました。それから片上さんの醤油でいろいろ試作してみたんですが、なかなかクセがある醤油で難しい。それで醤油ラーメンには島根県の森田醤油(公式HP)を使うことに決めました。しかし『どうしても片上醤油も使いたい』って思ったので、いろいろ考えたんです。そして浮かんだのが『和えそば』でした。」

 

- 和えそば?

「僕自身、和えそばは全く食べたこと無かったですし、ノーイメージの中で『うちのパツパツの麺でどうなるんだろう?』っていろいろ試作した後、もう1つの選択肢として始めることになりました。」

 

奈良で清湯メインですることに不安は?

「ありましたよ。やっぱり奈良って『白湯ラーメンが行列店になってる』って法則があったので、とにかく『これでいいのか?』って葛藤の中でのオープンでしたね。」


- オープンして?

「オープン前にみつ葉さんがウチのチャーシューを使った限定をしてくれたりして宣伝をしてくれたので、とても助かりましたね。」

 

- お客さんの反応は?

「『インパクトが無い』とかいろいろ言われましたね。それで二人で話し合って、最初の一ヶ月くらいはお客さんの意見も受け入れながら、『魚を足してみる?』とか試行錯誤の毎日でした。」

 

- 自家製麺?

「麺は食の道場では一切教えてもらってなく、自分で勉強しました。食の道場に行く前に、大和の製麺機は既に購入してたんですよ。いろいろ加水率とか考えて、店として『特徴あるこの麺でいこう』って決めました。」

 

- 集客は順調?

「うちはお蔭様でオープン以来、ずっと順調でしたね。オープンした翌年の1月に『関西ラーメンファイルの特番』で大きく取り上げて頂いて、あれから3ヶ月くらいは凄かったですね。」

- 夜カヂ?

「それまで昼営業だけでしてたんですが、いろんな人に食べて欲しいって思い、夜営業も始めました。その時にお客さんが『トリカヂの夜営業だから、夜カヂだな』って言ってくれて、『面白な~』って夜営業は夜カヂにしました。」

 

- 大切にしてること?

「真面目に嘘のない一杯を作りたい。『美味しいプラスアルファ』を持って帰ってもらえる店にしたいです。美味しいだけじゃなく、『トリカヂで食べて良かったな』って思ってもらいたい。」



<店舗情報>

■らぁめんトリカヂイッパイ

住所:奈良県生駒市俵口町1093

公式Twitter:https://twitter.com/nakamuraya1028

店ブログ:http://ameblo.jp/mlb28181/

 

(取材・文・写真 KRK 平成28年11月)