Vol.60:つけめん 恵那く

関西屈指のラーメン激戦区「一乗寺」。近年のラーメンブームで激戦区と呼ばれるエリアは増加したが、一乗寺ほど個性的で突き抜けてる店が揃ってるエリアは未だに無いと思う。そんな一乗寺の駅近くに2010年の夏、新しい店がオープンした。今でも珍しいが、つけ麺を屋号に付けた『つけ麺専門店』だ。どうやら店主は東京の人気店で修行してきた方らしい。一乗寺の所謂「ラーメン街道」から離れた立地、そしてオープン当初は看板も出さず営業。派手な宣伝はせず、お客さんの口コミで少しずつ知名度を上げて遂に今の位置まで上り詰めた店だ。とにかく謎が多い店だが、公表していない情報も含めていろいろ面白い話がありそうだ。「つけめん 恵那く」谷口店主にKRK直撃インタビュー! 


- 出身は?

「大阪です。」

 

- 飲食に興味を持ったのは?

「高校の時に王将でバイトしていて、卒業後もそのまま王将で働いていました。それから将来、何かしら自分の店がやりたいって思い、その資金作りのために10年ほどサラリーマンをしていました。その間に結婚もしましたね。」

 

- ラーメンは昔から好きだったんですか?

「そうですね。サラリーマンの時に京都に住んでいたんです。昔のラーメン屋って夜遅くまでしてる店が多かったんですよね。サーフィンをしていたので、夜から出掛ける前にラーメン食べてってことが多かったんです。今はもうなくなりましたが、『杉千代』って店があったんですが、そこが好きでしたね~。最初、『杉千代さんで働こうかな?』って思ったくらい好きでした。」

- 東京へ?

「サラリーマンしてる時、東京に転勤になりました。東京行っても同じような感じ。サーフィン行く前にラーメン食べて、海から上がってまたお昼にラーメンを食べて帰ってくるって感じでした。」

 

- その頃の印象に残っている店は?

「修行先の某店、他にはとみ田さん、燦燦斗さん、九十九里の近くにあった二升屋さん。基本、海に行く通り道でしたね。朝一で海に入って、それからラーメン屋さんに並ぶとかでしたから。」

 

- 自分の店への気持ちはブレなかった?

「そうですね。あまりサラリーマンに向いてないと思っていましたから。目的は出世じゃなく、自分の店の開業資金を貯めるだけってはっきりしていましたから。」


- ラーメン店での修行は?

「10年ほどサラリーマンをして、ある程度まとまったお金も貯まったので『ちゃんとした店で修行しないと』って思いました。サラリーマン時代は家でずっと自作をしていました。完全な自作でしたね。いろんな店を食べ歩いていたので、なんとなく似てる雰囲気で作っていました。一応、以前に王将にいたので知識はありましたから。」

 

- 修行する店は悩みましたか?

「杉千代さん(京都)が凄く美味しかったので、『そこに行こうかな?』って以前は思ってたんですが、その後、東京に行ってしまったので。それで実際に東京でいろんな店で食べていたら『ちょっとレベルがちがうな~。数が多いだけあって美味しい店が多いな』って思いました。」

 

- 修行先(非公表)を某店に決めた理由は?

「最初に食べ歩きをスタートしたのがその店。そこが一番バチっと来ましたね。雰囲気とか全て含めて、かなりの衝撃を受けましたね。そこがメッチャ美味い!って思ってから、他の店にも行くようになりましたから。」

 

- ラーメン店で初めて働いて、どうでしたか?

「生意気を言うようですが、一種類しかやらなくていいのでとてもシンプルでした。王将ではいろんな食材を集めて、数十種の料理を手早く作らないといけなかったので。だからその店では1つのことに没頭できました。もちろん仕事は厳しかったですよ。21世紀とは思えないくらい厳しかったですね。それから1年半ほど働かせてもらい、自分の店をするってしっかりと伝えて辞めました。」

 

- 自分の店へ進むことに。

「修行期間は1年半って短いですが、かなり濃密な日々でした。休みの日も自主的に仕込みを体と頭で憶えるために出させてもらっていました。歳も歳だったのでそんなにゆっくり修行してるわけにもいかなかったし。これが20代だったら3~4年のんびり修行もできるんでしょうけど。」


つけめん 恵那く(2010年8月11日オープン)


- 場所?

「修行先を辞めてから、オープンまで5ヶ月です。そんなにかかっていないですね。場所は『京都』って決めていました。サラリーマンの時に京都に住んでいたので。」

 

- 激戦区「一乗寺」に?

「東京の人でも『一乗寺は凄い激戦区』って知っていましたから、『どうせやるなら一乗寺で!』って思っていました。白黒はっきりしますからね。このエリアって一年以内に潰れる店っていっぱいあるでしょ?『ここでアカンかったら、また働いたらいいな』って気持ちでした。」

- 屋号の由来?

「サーフィンしてる頃、よくバリ島へ行っていたんです。インドネシア語で『ENAK』は美味しいって意味なんです。それを日本語と画数で考えて、『恵那く』と決めました。」

 

- オープンして?

「全然でしたね。東大路の方がメインなので、やっぱり一本ずれているので。本当はあっちの方でしたかったんですよ。ここ(店の前)を通るのはこの筋に住んでる人だけなんですよね。宣伝は全くしてなかったし、オープン当時は看板さえ出していなかったんです。修行先も言っていないし。」

 

- 口コミで評判が拡がって?

「幸い、ウチには最初からコアなお客さんが付いてくれたんです。それで口コミで少しずつ知名度が上がってきましたね。」


つけめん


- 恵那くさんの提供するつけ麺は?

「修行店とは最初から違いますよ。東京の主流は煮干しでしたから。スープ自体はベースはオープン当初からあまり変えていませんが、魚のスープと魚粉の配合、油の配合を少しずつ変えていますね。」

- 最近、自家製麺に?

「修行先で教え込まれていたのは『麺は麺屋が作った方が絶対に美味い』ってことだったんです。『俺らはスープだけ作るんだ。スープ屋だ』って雰囲気でしたね。それから京都でオープンして、いろんな人から影響受けました。あとは原価がどうしても上がってきていて、これ以上値段を上げるわけにはいかない。そうなったら自家製麺に変えるしかないって思いました。」

 

- 自家製麺を導入して?

「嵌まってるというか、シーズンごとに麺の状態が違うので難しいですね。常にいい状態を保つってのが難しい。井澤製粉(公式HP)の方にいろいろミックスしてもらって使っています。結局、自家製麺を始めるまで一年かけましたね。今も初めてのシーズンだし不安はあります。だから1シーズンごとに(同じ製麺機を使ってる)山崎麺二郎さんに頼みに行って、いろいろ教えてもらっています。製麺機によってクセが出るらしいので、同じ製麺機を使ってる山崎さんに聞くのが一番早いんです。やっぱりあの人、技術高いですからね。『今の麺が一番いい』って言ったら終わりですが、けっこう美味しい麺が作れてるとは思います。」


メニュー(2017年7月撮影)


- カレーつけめんは?

「カレーは完全オリジナルです。最初、ウチのノーマルのつけ麺でも『カレーが入ってる』ってよく言われていたんですよ。『だったらカレーも作ったるわ』って感じでしたね(笑)。いろんな香辛料をちょっとずつ入れているので、その中にカレーを感じる人もいるんでしょうね。」

 

- 谷口店主の大事にしてることは?

「掃除ですね。味に拘るのは当然ですから。昔は『汚いラーメン屋は美味い』って変な都市伝説とかありましたが、今はそういう時代じゃない。僕も食べ歩きをしていて、美味しいけどやたら汚い店があったら味とか以前にやっぱりね。『お金触った手でネギ盛りよった』とか。基本のことですからね。衛生的なことを一番拘っています。綺麗にしとかないとかっこつかないですから。」



<店舗情報>

■つけめん 恵那く

住所:京都府京都市左京区一乗寺高槻町20-2

Twitter: https://twitter.com/tsukemen_enak

 

(取材・文・写真 KRK 平成29年8月)