Vol.61:麺~leads~なかの


 新星とは正にこの店のことだろう。2014年ももう終わろうとしてる12月26日、突然に奈良県大和高田市に一軒のラーメン屋がオープンした。前宣伝など何もなかったが、その泡立ったラーメンのビジュアルがSNSで拡散してとても話題になったものだ。

 実際に食べに行ってみると、新店とは思えないラーメンのレベルに衝撃を受けた。すぐに奈良の情報誌の担当に電話して、〆切が迫っていた年一回のラーメン特集号にこの店を強く推薦した。そしてビジュアルのインパクトから、オープンしたばかりの店がラーメン特集号の表紙を飾ることとなった。

 その後も勢いは増すばかりで一気に奈良屈指の行列店となり、日本各地からラーメンファンが押し寄せてる。今や全国区の知名度になりつつある店だが、インタビューを他で見た事が無いので謎が多い。どこまで語ってくれるのか分からないが、いろいろ質問をしてみようと思う。"麺~leads~なかの"中野店主にKRK直撃インタビュー!


- 出身は?

「奈良県桜井市です。その後、東大阪へ移ったので育ちはほとんど東大阪市の方です。」

 

- ラーメンに興味を持ったのは?

「21歳頃ですね。育ちの環境からか本格的なラーメンを食べる機会があまり無かったんですが、何軒かでラーメンを食べた時にちょっと興味を持ち始めたんです。それでいろんな店で食べるようになって、ある日、大阪の某人気店で食べた時に『これは美味しい。こんな美味しいラーメンあるんや?』って驚きました。それから本格的にラーメンにのめり込んでいきましたね。」

- 作る方にも興味を持った?

「何か自分でしたいなって思いは常にありました。仕事の都合で奈良へ戻ってくることになった時、ラーメン屋でも働いてみたいなって気持ちもあり、ちょうどオープンした田原本塩元帥でアルバイトとして働くことにしました。」

 

- ラーメン屋で初めて働いて、どうでしたか?

「接客から基本を学んでましたね。この時に塩元帥さんで学んだことが、本当に今でも役立っています。でもアルバイトなので麺場には立てない。そういうのもあって、それからいろんなラーメン屋さんを食べて、ある店で食べた時に『美味しい』って思い、その店で正社員としてお世話になることになりました。正式な弟子とかでないので、修行店の名前は出していません。」

 

- その店のラーメンが一番気に入ったから?

「そうですね。当時、大阪の美味しいラーメン屋さんを何軒か食べ歩いていたんですが、鶏白湯というジャンルで一番美味しいって思ったのはその店でした。だから『この店で働きたい!』って思いました。衝撃的な美味しさでしたから。」

 

- 独立願望はあったんですか?

「それから兄貴が飲食店をやりたいってことになって、僕は兄のお手伝いをしようって決心して、お世話になっていた某店を辞めさせてもらうことになりました。その後、家族の都合で母親も(東大阪市から)桜井市の方へ引っ越して来るってことになって、完全に地元(東大阪)を離れるってことになりました。それでいろんなことがあって、逆に僕のやりたいことを兄貴に手伝ってもらえるって流れになりました。兄が飲食店をしてても、どっちにしても僕はいつかラーメン屋をしたいと思っていたので、僕の要望を強く出して、兄貴と一緒にラーメン屋をすることになりました。」



- 場所は?

「最初、大和高田市ってのは全く頭に無くて、橿原周辺で探していたんです。でもなかなか良い物件が無くて。それである日、電車でフラッと大和高田市に来て、駅前の不動産屋さんにココを紹介してもらいました。交通量も多い通り沿いだし、意外と悪くないかなと思いましたね。前はスナックだったらしいんですが、元々スケルトン状態で一から作らないといけない。居抜きで探していたので、それで『お金がかかるな~』って悩みましたね。でも自分らが思うように作れるので、今となっては良かったかなって思っています。」

 

- 提供するラーメンは決まっていた?

「イメージは持っていたので家でもちょっと炊いたりしてたんですが、家の火力では全然できないんですよね。それで家ではタレを作ったりしていただけ。スープはお店ができてから、2ヶ月でも3ヶ月でも納得するものができるまで開けないと決めて、店の中で作り続けていましたね。結局、2ヶ月くらいかかりました。」

 

- 最初から白湯で?

「僕の好みは白湯でしたし、逆に清湯は作り方が全然分からない(笑)。」

 

- 泡はどこかの影響?

「オープン前に試作を続けていた時、ウチの香味油の見た目が黒っぽくてよくないって思い、なんとかならないかな~って悩んでたんです。それで当時、奈良の某店さんがやってるのを知っていたので、一度やってみようかなって泡立ててみました。するとスープの口当たりがよくなるし、見た目も良くなる。それでこの方がいいんじゃないかって。香味油の味は気に入っていたのでそっちをいじくるよりも、泡立てることによってカバーできるなって思いました。オープンの時からずっと泡立てていました。その後、大阪でも何軒か出てきて泡系ブームがやって来たんですが、その時は逆にブームが去った時が怖いなって思いましたね。」


麺~leads~なかの(2014年12月26日オープン)


- そして2014年12月26日にオープン!

「準備が整い次第、突然オープンしました。1日10人でも来てくれたらって思って、宣伝も全くせずにオープンしました。」

 

  - 屋号の由来?

「兄貴と二人でするってことで、名字の"なかの"。麺屋ってのも考えたんですが、当時はこんな並んでくれる店になるなんて一切予想してなかった。それで僕らとお客さんが仲良くなって、お客さん同士も仲良くなってくれたらって意味も含めて、lead(導く)を付けて"麺~Leads~なかの"にさせてもらいました。」

 

- レギュラー2本のみで営業を続けてることについて?

「今の醤油と塩でいっぱいいっぱいって部分もありますが、僕が一番思っているのは今のこのラーメンの伸びしろというか、もっともっと美味しくできる可能性を持っていると思っています。もっとこのラーメンを追及したいって。違うメニューをして他に逸れてしまうと、そっちを模索するようになります。それなら今のメニューをもっと納得できるものにできてからでいいって思っています。もちろん1日限定とかもちょっとしてみたいって気持ちもあるんですがね。」


特製TORI白湯らーめん


- 醤油と塩のイメージは?

 「醤油のイメージは魚を全面に出して和のイメージ。塩はバジルとかオリーブオイルとかよく言われるんですがどちらも使ってなくて、紫蘇なんです。泡立てたりラーメン鉢のデザインで洋風のイメージがあるみたいなんですが、そんなに洋風を意識してるわけでなく、使ってる食材は和なので。ただ食べた時に感じるイメージは洋に感じるかなって。ベースの油は醤油も塩も同じで作り方の手法を変えてるだけです。今は7:3くらいで醤油がでていますね。ただリピートされてる方、女性は塩が多いですね。」

 

-人気のチャーシューについて

「手法でいうと特に変えてるってことは無いです。たぶん他の店がやってないのはこれかなって拘りはあるんですけど。元々、お世話になっていた店がチャーシューがとても評判いい店でしたから、多くを学ばせて頂きました。最初、豚肉を選ぶ時にいろいろ試作していたんですが、ある業者さんが『ドルチェポルコ』ってのを紹介して下さいました。使ってみると『全然甘味が違うな』って驚きましたね。ウチのチャーシューは肉の質に助けられている部分もかなりあると思います。」

 

- 麺について

「最初、いろんな製麺屋さんからサンプルを頂いたりしてて、よく『どこ(どの店)出身ですか?』って聞かれたんです。麺屋さんからはどのくらいの数が見込めるのかってことですね。その時、僕は『出身とか別に無いです』って言っていたら、あんまり反応がよくなくて(苦笑)。あちらも商売なので当たり前のことなんですが、僕はけっこうそういうのを気にしてしまうタイプなんです。その時、つるみさん(鶴見製麺)は最初から何も聞かずにいろんな麺を持ってきてくれて、「どんな麺がいいか言ってください」って。それで『ウチはこういう感じの麺が』って説明したら、それを何回も試作して持って来てくださって。僕は『ウチ、どのくらい出るか分からないので、そこまでしてもらったら申し訳ないです』って言ってたんですが、『大丈夫です』って。本当に感謝しています。そういう経緯があって、こういう会社さんと付き合いしていきたいって気持ちがあってずっと使わせてもらっています。」



- 人気爆発のきっかけ?

「オープンした翌日にシナさん(インタビュアー)が食べに来てくださったんですよね。すぐに奈良の情報誌ぱ~ぷる(公式HP)の方へ電話して紹介して下さったんです。それで翌月に発売になるラーメン特集号(年1回)の表紙に載せて頂きました。」

 

- 開店1ヶ月目で、いきなりの表紙!

「雑誌の担当の人に『楽しみにしておいてください』って言われて、何かなって思ってたんです。それで雑誌が届いたら表紙だったのでびっくりしましたね。」

 

- あの時は、〆切 のギリギリでしたよ(笑)

「そうですよね。あの後、年末のギリギリに撮影してもらって、1月25日に発売でしたから。あの本が発売になってから奈良の一般のお客さんがドンっと来て下さるようになりました。ありがとうございました。」 



- オープン以来、順調ですか?

「オープン以来、波もなく順調にいっていたんですが、落とし穴というか、兄貴の腰の怪我、僕の足の病気が重なってしまって。遂に二人とも動けないって状況になり、結局4ヶ月休業することとなってしまいました。あの時も復活の時、シナさんにお世話になってしまって。ウチはシナさんにお世話になってばかりですね(笑)。長期休業から復活のタイミングでらの道スタンプラリー(らの道奈良1)に参加させてもらって。らの道が無ければ、またどうなっていたか。またお客さんに並んでもらう店になっていたか分からなかったです。まだ体調が心配だったので、そのタイミングで情報発信のためにTwitter(公式Twitter)も始めさせてもらいました。」

 

- 最後に一言お願いします。

「ラーメンの味ってのは好みがあると思うので、僕と兄貴が食べ歩いて『これでいこう』って決めた味なのでそこはブレるつもりはないです。自分たちが美味しいと思ったものを作っていきたいと思っています。今はスタッフも増えてきて、一人一人僕が尊敬できるスタッフが働いてくれています。ラーメンの味だけでなく、そういう接客というか雰囲気も楽しんで欲しい。僕は正直、接客は得意じゃないんですけど、兄貴は本当に接客、人当たりがいい。僕には真似できなくて、尊敬してる部分です。兄貴のそういう部分をスタッフの子達も見習ってくれていて、向上心を持ってるスタッフが多い。そういう環境で自分が働けてることに感謝しています。

 将来的には、奈良で兄貴と僕、一店舗ずつ出したいって目標があります。今、特にスタッフが増えてきていて、同じ志の仲間が増えていくと、会社として自然と店舗増やしていけたらって思っています。」



<店舗情報>

麺~leads~なかの

住所:奈良県大和高田市神楽254-6 セゾン神楽103

Twitter: https://twitter.com/leads_nakano

(取材・文・写真 KRK 平成29年8月)