Vol.97:ドン・チードル


 ラーメンブームで盛り上がる奈良ラーメンシーンに、2015年9月、新たな新店が加わった。屋号は"ドン・チードル"。店主は大阪豚骨、そして自家製麺の先駆者"天神旗"大鶴店主のお弟子さん。これまで"天神旗"を卒業した錚々たる顔ぶれを考えると、もうオープン日が待ちきれない気分だったのを憶えている。

 オープンと共に話題になり他府県からのラーメンファンも多く集まり、翌年には某ラーメン本の関西豚骨大賞を受賞。もうすぐ3周年を迎えようとしているタイミングで、取材する時間を作っていただいた。ゆっくり話をするのは初めてだ。"ドン・チードル"山口店主に、KRK直撃インタビュー!


- 出身は?

「奈良市です。」

 

- ラーメンをするきっかけは?

「元々、和食を奈良でしていました。そろそろ自分で独立して何かしないとなって年齢になった時、自分でできることは何かなと考えました。そして頭に浮かんだのがラーメンでした。ラーメンを食べるのがとても好きだったんです。ラヲタってほどではありませんが、奈良、大阪を中心にいろんなお店でラーメンを食べていましたから。それで一回、ラーメンをしてみようかなと思いました。」


- 修行先に"天神旗"を選んだ理由は?

「初めから天神旗しか頭に無かったですね。元々、豚骨が凄く好きだったし、食べ歩きをしていたのは関西だけでしたが、グッと心に来たのが天神旗の老スープでした。」

 

- 天神旗での修行は?

「厳しかったですね~。入る前は全然知らなかったので、天神旗は厳しいとかは働き始めてから聞きましたから(笑)。入る時、大鶴さん(天神旗 店主)から『とりあえず1ヶ月ほど働いてみてから決めてくれたらいいから』と言われました。それでお世話になることになったんですが、最初は本当にキツかったですね。和食時代も身体は使ってはいたんですが、天神旗は肉体労働と近い感じなので。スープを作るのに使っているのもスコップやバールとかなので(笑)。和食時代とは全然やっていることが違いましたからね。」

 

- 山口さんが大鶴店主の最後のお弟子さんと聞きましたが?

「そうですね。天神旗はもう弟子としては雇っていませんから。僕の同期には、大阪で独立した"麺処ほんだ"の店主がいます。」

 

- 独立のタイミングは?

「天神旗に入る時に『将来どうするねん?』と聞かれたので、独立したいと伝えていました。天神旗から正式に独立してる方は、みんな6年ほどいたんですよね。僕も6年ほど経った頃に、自分から『そろそろ独立したいんですが、いいですか?』と聞いたんです。その時、(大鶴さんは)『いいと思うよ』とおっしゃってくれました。たぶんその時点で僕の技術や経験が不十分だったら『まだもうちょっと修行した方がいいと思うよ』と言ったと思うんです。それで天神旗を卒業することになりました。」


ドン・チードル(2015年9月16日オープン)


- 場所は奈良と決めていたんですか?

「全然決めていなかったです。大阪市内だと(天神旗と)同じ商圏内になるので、奈良から東大阪辺りで探していました。この場所は見つかったというより、たまたま『あそこ空いてるで!』と言われて、見に来たらこんな状態だったのでちょうどいいわと思いました。オープンしたのが、天神旗を卒業してから2ヶ月ほど経ってからでしたね。」



- 奈良のお客様の反応はどうでしたか?

「大阪とは受ける味も全然違いましたね。最初、"濃香とんこつ"を推そうかなと思っていたんですけど、オープンしてみたら出るのが淡麗ばかりだったんです。それで途中からメニュートップを淡麗に変えたんですけどね。ウチは若い人より年配のお客様の方が多いですね。他の奈良のお店を見ていると若いお客様が多いんですけど、ウチは若いお客様が来ないんですよね。でも最近は若いお客様、女性のお客様も増えてきました。」

 

- 淡麗は山口さんのオリジナルになるんですね。

「天神旗のメニューに無かったのは、淡麗ですね。他のメニュー、辛々とかも配合とか変えているんですがね。淡麗は、自分のお店で選択肢としてこういうのも必要だろうなと思いました。」

 

- 限定もいろいろ増えていっていますね。

「毎年6月が暇なんですよ。だから今ある限定、6月に完成したのが多いと思います(笑)。よく出ている限定の"ぶたおとさかな"は、二人で来られたお客様の一人が純豚骨を食べれないって場合、そういう方のために何か作っておこうと思って生まれたものです。こんな狭い店に二人で来てもらって、一人は食べれないと言われたら厳しいですしね(笑)。」



- 店がとても綺麗ですね。凄い掃除していますよね。

「掃除には2時間かけていますので(笑)。早く帰ろうかなと思うこともあるんですが、一回でも手を抜いてしまうと、とことん抜いてしまうようになりそうですので。やっぱりね、綺麗な店の方がいいですからね。」

 

- 豚骨についての拘り

「いろんなお店の豚骨は何か混ぜている店が多いですけど、僕は"純豚骨"が好きだし、純豚骨を奈良に残していきたいなと思っています。(純豚骨は)好きな人と嫌いな人が凄く分かれるんですけど、自分のラーメンを信じて、ブレずにやっていこうと思っています。」


【KRK動画】屋号の由来、店のラーメンについて


 <店舗情報>

■ドン・チードル

住所:奈良県奈良市大宮町2-2-2

オープン日: 2015年9月16日

 (取材・文・写真 KRK 平成30年6月29日)