Vol.222:手打ち麺 やす田


 今回取材するのは新大阪駅の近くにある「手打ち麺 やす田」。店主は豚骨の名門「天神旗」出身の方で、「手打ち・手切り」に拘ったスタイルでオープン当初からかなり話題になったお店だ。

 今回取材する時間を作っていただけたので、手打ちを選んだ理由、豚骨の名門を修業先に選んだ理由などいろいろ聞いてみようと思う。「手打ち麺 やす田」安田店主にKRK直撃インタビュー!


- 出身は?

「大阪です。阪急の三国です。」

 

- 元々、ラーメンは好きだったんですか?

「ラーメンはずっと好きでしたね。大学を卒業して印刷屋の営業を3年くらいしていました。話すのが苦手だったのでそのまま放っておくのは大人として駄目だと思って、営業をやってみようと思ったんです。やってみてやっぱり向かないと分かりました。それで自分の好きなことをやっていきたいと思い、自分の好きなのは何かと考えた時に浮かんだのがラーメンでした。その時に初めてラーメン屋で働きたいと思いました。」


- ラーメン屋をしようと思ってからは?

「天神旗の大鶴社長と共通の知り合いがいまして、『ラーメン屋で働きたいという友達がいる』と紹介してもらい面接に行きました。当時、ラーメンは好きだったんですけど有名店で食べたことがあまり無かったので、大鶴社長に15店くらい有名なお店を教えてもらって食べ歩いてみました。それでやっぱり天神旗の味が1番好きだったので、天神旗に入ることに決めました。」

 

- 初めてラーメン屋で働いてどうでしたか?

「かなりしんどかったですね。学生時代、飲食店でアルバイトをずっとしていたので多少は慣れていたんですが、やっぱり全然違いました。足がしんどかったです。天神旗の場合は特に豚骨スープを炊きながらなのでかなり重労働でした。」

 

- 天神旗に入る時、独立志望はありましたか?

「全く考えていませんでした。ラーメン屋さんで働きたい。それだけでした。」

 

- 天神旗では何年間?

「7〜8年ほどお世話になりました。本店だけでなく、経済大学前でしていた野望天、そして大鶴製麺処の方でも働いていました。」

 

- 当時から麺に興味を??

「天神旗に入って2〜3年ほど経ってもなかなか豚骨が言うことを聞いてくれなくて、ノイローゼみたいになってしまったんです。その時に大鶴社長が『麺のことをやってみないか?』と言ってくれました。ちょうどつけ麺が東京から来だした頃、そういうタイミングだったので自家製麺をお手伝いすることになりました。」

 

- 製麺は安田さんに合っていたんですか?

「そうですね。初めの2年ほどはなかなか上手くいかなかったですが、豚骨よりは麺は安定してくれる。振り幅が豚骨は違うんですよね。」


◆2011年9月13日オープン


- 独立のきっかけは?

「募集をかけた時に山口さん(ドン・チードル店主)と本田さん(麺処ほんだ店主)が入ってきたんです。入っても辞める人が多かったんですが、その2人が1年ほど続いているのを見て、独立にはちょうどいいタイミングだと思いました。」

 

- 場所はいろいろ探したんですか?

「当初は阪急の三国で探していたんですがなかなか無くて、この地域まで探しにきてこの物件と出会いました。半年ほど探していましたね。」

 

- 今でさえ全国的にもかなり珍しい「手打ち・手切り」を約9年前にしようと思ったきっかけは?

「天神旗の大鶴製麺処でつけ麺を始めた頃、手で練った麺、うどんとかいろいろしていて、野望天の方ではうどん教室も予約制でしていたんです。その一環で小学校に麺を教えに行く機会があったんです。子供たちが作った麺を家へ持って帰り、一緒に食べたご家族の方達から『感動しました!』と手紙をもらったんです。その時に『見た目だけでなくて、気持ちの入ったものをちゃんと作っていけたらいいな』と思いました。それが手打ちを始めたきっかけですね。いろいろ考えた中で『手打ち』にポテンシャルを感じました。『後先考えずに必死で何かをやりたい』という想いが強くありました。」

 

- それで屋号に「手打ち麺」を付けたんですね。

「普通は『手打ちラーメン』とかにするんですけど、『手打ち麺』で止めたんです。本当は蕎麦とかうどん、つけ麺とかいろんな麺をやりたいという想いがあったからなんです。でも試作が上手くできなくてあきらめました。本当は天神旗時代にしていた無カンスイ麺とかもやりたかったんですけどね。」

 

- 商品をイリコ塩とカツオ醤油の2本に決めた理由は?

「普通はスープから仕上げるお店が多いかと思いますが、僕の場合は麺から試作を始めて、その麺に合うスープを考えていきました。イリコ塩はうどんの冷かけが好きだったので、それに影響されて作りました。イリコを使ったラーメンを作りたかったんです。」

 

- カツオ醤油は?

「大鶴製麺処でしていた釜揚げうどんのカエシ、そこからヒントを得ました。」



- 2011年11月のオープンからもうすぐ10周年。麺とはどう付き合ってきましたか?

「最初の5年くらいはかなり悩みましたね。ここ最近は温暖化の影響でタンパク量がブレるんです。麺の硬さが安定しなくて、手打ちでしているのでその辺はよく分かるんです。硬くなり過ぎることが多いんです。硬くなる分、力を凄く加えないといけなくなる。柔らかくしないといけないのでどうしようかと最近は考えているところです。」

 

- 関西に自家製麺ブームが来て以来、いろんな麺が登場してきていますが気になりますか?

「気にはなりますね。一応、いろいろ食べには行きますけど、どういうのが流行っているのか確認するだけで、それによって自分の麺に影響するってのは無いですね。」

 

- 安田店主が大事にしていることは?

「気持ちのこもったものを『心一麺』に出し続けたいということですね。天神旗には『心一杯』という言葉があるんです。それに影響を受けて、僕は『心一麺』という言葉を使っています。心一麺に何か気持ちを感じられるものを届けられたらいいなということです。格好とか気にせず、ちゃんと気持ちの入ったものを提供し続けたいと思っています。」



◆店舗情報

手打ち麺 やす田

大阪府大阪市東淀川区東中島1-21-2 新大阪ハイツ106号

オープン日:2011年9月13日

 (取材・文・写真 KRK 令和3年6月21日)