Vol.228:麺屋 桜息吹 西宮本店


 今回取材するのは西宮市の人気店「麺屋 桜息吹 西宮本店」。店のコンセプトとして「安定より進化」と謳っているように、久留米伝統「呼び戻し」スープにアレンジを加えて独自の味を追求し、この系統では珍しい無化調豚骨&自家製麺にも取り組んでいる注目店だ。

 昼営業終わりに時間を作って頂いたのでいろいろ聞かせてもらおうと思う。「麺屋 桜息吹 西宮本店」石井店主にKRK直撃インタビュー!


- 出身は?

「福岡の久留米です。」

 

- ラーメンは昔から好きだったんですか?

「はい。地元には豚骨ラーメンしかなかったので、当時は豚骨ラーメンしか知りませんでした。大学生の時に久留米の某ラーメン屋でアルバイトを始めたんです。そこに入ってすぐに『自分でラーメン屋をやりたいな!』と思いました。それで大学を一年でやめてラーメンの道に入りました。」

 

- 理由は?

「自分が作ったラーメンを目の前でお客さんがとても喜んでくれて『お前の作ったラーメン、美味しいな!天国のおばあちゃんに食わせてあげたかった』と言ってくれたんです。そんなこと言われたこと無かったので衝撃的でした。それがきっかけですね。」


- 久留米から関西に来たのは?

「もう15年以上前なんですけど、当時ラーメンのフードテーマパークが流行っている頃でその久留米のラーメン屋さんが明石市(兵庫県)に出店することになりました。当時、僕はまだ地元から出たことがなかったので『いい機会だな!』と思って明石の店へ来ることに決めました。」

 

- 明石で久留米の豚骨への反応は?

「まだ豚骨ラーメンの認知度も低かった頃だし、商業施設内だったのでなんせ臭い臭いと言われていました。予想以上に臭いって言われるのでかなり傷つきましたね。身体にも染みつくじゃないですか?だからアルバイトの子たちも『帰宅したら家族に臭いって言われました』とか、僕もコンビニで後ろのお客さんに臭いと言われたことがあったんです。その時に自分が独立した時は臭くない豚骨ラーメンを作ろうと思いました。」

 

- その会社では何年ほど?

「その会社で5年ほどお世話になりました。フードテーマパークが各地に広がっていったので、僕も各地で立ち上げとか携わっていました。」

 

- 独立志望はいつから?

「いつかは自分のお店をしたいとずっと考えていました。」


◆2014年10月3日オープン


- 修行先を離れてからは?

「会社を辞めた時も『このままでは福岡に帰れないな』と思っていたので、明石に戻ってきました。仕事でいろんな土地に行きましたが、なんか明石が性に合っていたんです。その時はこっちで一花咲かせてから福岡へ帰りたいなという気持ちでした。」

 

- 西宮に来たのは?

「元々、神戸とかを考えていたんですけどなかなか物件が見つからなかったんですよね。豚骨ラーメンをやらせてくれるテナントってあんまり無かったんです。当時はもう家族もいたので(家族で)住むなら西宮がいいなと思っていた時に、たまたまこの物件と出会いました。」

 

- 屋号の由来は?

「僕は桜が好きでしたし、西宮市のお花も桜なんです。それで桜を入れようと決めました。桜というと軽い感じがあったので何か力強い言葉も入れようと思って浮かんだのが息吹。『繊細さと豪快さ』みたいなので相反する言葉を引っ付けた造語にしました。商品もそういう商品。しっかりした豚骨だけど臭くない。接客も元気だけど凄く気が利く。相反するものを引っ付けた矛盾みたいなところを狙いました。この屋号は結構すぐに浮かびましたね。」



- 自店で提供する商品は?

「地元(久留米)にいた時の作り方がベースになっています。俗に言う呼び戻しという継ぎ足していく作り方しか知らなかったので、それをベースに臭くない且つ豚骨感があるというのを目指して作っていきました。でも最初はもう全然でした。まず脳みそ付きの豚の頭、これがなかなか手に入らなかったんです。新規の人間が手に入れるのは難しくて、業者を決めるのも大変でしたね。そして毎日ずっと分量や炊く時間を変えながら試作をやっていました。夜中にこの店内で20分タイマーかけながらしていました。それで寝てしまうことがあってスープを焦がしてしまって、一年目は店を休むことも多かったですね。」

 

- 自家製麺を始めたきっかけは?

「一年目はミネヤさん(ミネヤ食品工業株式会社)にお世話になっていて、1周年の時に自家製麺に切り替えました。自分のラーメンは自分で全て作りたいという気持ちが芽生えたんです。それと自分の子供が卵アレルギーで、当時の麺はだいたい卵白か卵白粉が入っていたので食べられなかったんです。ラーメン屋の子供なのにラーメンを食べられないのって嫌だなと思って、それで自分で麺を作ろうと思ったのも理由の一つです。」

 

- 自己流で?

「大和さん(大和ラーメン学校)にいろいろ教えてもらってから、何度も失敗しながら自分でしていました。麺を切り替えてからは『前の方が良かった。なんで変えたの?』と多くのお客さんにしばらく言われていました(笑)」

 

- あくまで豚骨メインは変わらない?

「そうですね。正直、豚骨って割りに合わない部分があるんです。休みの日も火を入れに来ないといけないし、何十時間も炊き続けることも大変です。時代は鶏清湯、鶏と魚介みたいになった時に『豚骨をやめてしまおうか?』と思った時期もあったんです。何回も心が折れそうになったことがあるんです。その時に嫁さんが『豚骨だけはやめてはダメだよ!』と言ってくれたんです。あの時に嫁さんが折れていたらこの店は終わっていたなと思っています。僕は久留米時代から豚骨ラーメンしか学んでこなかったので豚骨ラーメンしか作れなかったですからね。」

 

- 石井店主が大事にしていることは?

「あくまで美味しいラーメンがあってのことなので、美味しいラーメンを作る追求はやめません。今はどこのラーメン屋に行っても美味しいラーメンが食べられるし、YouTubeとかでレシピとか出てくるので極秘のレシピとかも無くなってきている。僕はこの時代に大切なのは接客や環境作りだと思っています。スタッフの『いらっしゃいませ』の一言でよりラーメンを美味しくできると思っています。なので今は人材の育成、環境作りにも力を入れています。」

 

- いつかは福岡に?

「はい。戻るというか、店舗展開をしながら福岡にもいつか店を出したいです。ウチの母はずっと久留米にいるので、福岡に出店して自慢させてあげたいなという気持ちがあります。」


◆店舗情報

麺屋 桜息吹 西宮本店

兵庫県西宮市室川町5-25 リュウマンション1F

公式HP:http://www.sakuraibuki-japan.com/

instagram:https://www.instagram.com/sakuraibuki/

Facebook:https://www.facebook.com/sakuraibuki.japan

オープン日:2014年10月3日

 (取材・文・写真 KRK 令和3年8月27日)