Vol.240:らあめん 鬼ぼし


 岡山駅の近くに「凄い煮干しラーメンが食べられるお店がある」と関西在住の私にも噂が入ってくるほどのお店がある。屋号「らあめん鬼ぼし」。関東や関西でも流行っているセメント系の煮干しラーメン(コンクリートになる前のセメントに似たビジュアルなので俗称としてセメント系と呼ばれている)を看板商品にしたお店だ。嵌まる人にはとことん突き刺さるセメント系煮干しだが、すでに岡山県でニボラー(煮干しラーメン中毒になったコアなファン)急増中と聞いている。私の岡山入りに合わせて時間を作って頂けることになったので、初対面の店主にいろいろ聞いてみようと思う。「らあめん鬼ぼし」小野店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「生まれも育ちも岡山県です。」

 

- ラーメンを作るようになったきっかけは?

「高校まで田舎の(岡山県)高梁市にいたのでラーメンとは縁の無い生活をしていたんですけど、大学で岡山市に進学した時にダントツラーメンという二郎系のお店と出会いました。中国四国地方でたぶん一番最初に二郎系を出したお店なんですが、そこに病的に嵌って週六くらいで通っていて、昼も行って夜も行ってという日もありました。それで当時の店長が『そんなに来るなら働いたらいいやん。賄いで食べたらいいよ』と言ってくれたんです。」

 

- それを聞いて?

「『それは確かにな〜』と思ってアルバイトで働くことにしました。他の飲食のアルバイトもしていたので掛け持ちという形で働いていて、その時に『飲食って面白いなー。特にラーメン屋が楽しいな〜!』と思い始めました。お客さんとの交流とかも楽しかったですからね。それで大学を卒業する時に就活をすることもなく飲食で食べていこうと決意してダントツラーメンに就職しました。」

 

- 当時、独立志望は?

「いずれは独立したいと考えていました。人から教えられた通りに作っているだけじゃなく、いつかは自分でゼロから作ったものをやりたいと思っていました。」

 

- ダントツラーメンでは?

「一年経たないくらいでお店を任せてもらうようになり、2年後くらいに正式に店長になりました。アルバイトから数えたら10年ほどお世話になりました。」

 

- 独立のきっかけは?

「趣味で自転車をしていてレースで怪我をして1ヶ月半ほど入院した時期があって、その間にいろいろ考えて『これも何かのタイミングかな〜』と思いました。僕がいなくてもお店は他のスタッフが入って営業できていたのもありますね。それから数ヶ月後に退社して、自分の店をオープンしたのが2020年の6月です。」


- 自店で提供するラーメンは悩みましたか?

「やり易さで言えば二郎系で独立する方が(ダントツラーメンから)付いてくるお客さんもいたと思うし、ノウハウもある。でもせっかく自分でやるからには面白いこと、意外性のあることをしたいと思いました。ダントツ出身なのに全然違うことをしていると驚いてもらう方が面白いと思いました。」

 

- 全然違うラーメンとは?

「只、どういうジャンルのラーメンをするかはまだ定まっていませんでした。『自分が衝撃を受けたラーメンは?』と振り返ってみると最初はダントツラーメンで、その次は東京で食べた凪さん(すごい煮干ラーメン凪)の煮干しでした。新宿で食べた時に『煮干しって主役になるんだな!』と衝撃を受けました。それで『岡山にはセメント系が無いし面白いかな〜』と思いました。」

 

- 方向性が決まってからは?

「それで仕事を辞めて東京へ行って数店舗食べ歩いていました。ちょうどコロナのタイミングでそれがラストチャンスになってしまって、結局『独学でするしかないなー』となり試行錯誤しながら作っていました。これまでは豚骨を炊くことしかしていなかったので煮干しを触ったこともほとんど無かったんです。でもジャンルが違ってもラーメンはラーメンなので、家で自作している内に『これはいけるかも?』と思うものが出来てきました。」

 

- セメント系が岡山で受けるかの不安は?

「岡山にも煮干し主体の店があったんですけど、ほとんどが綺麗な煮干、クリアーな濁らせないスープが主体だったので逆にセメント系が受けるんじゃないかと考えていました。見た目のインパクトがありますからね。」

 

- 目指したものは?

「東京でいろいろ食べさせてもらってけっこうエグいとこは本当にエグかったので、そのまま岡山でしても絶対受けないなと思いました。僕も煮干しが嫌いになりかけたくらいエグみのあるお店もあったので(笑)。だから食べ易さは主軸として大事にして、『見た目の割に食べやすい』というのを裏のキャッチフレーズみたいにしています。」


◆2020年6月8日オープン


- この場所に決めたのは?

「ずっと探していてこの近くで居酒屋している友人からココを紹介してもらいました。厨房機器だけ少し入れ替えてほぼ居抜きでしています。一人でも手が届くような店がやりたかったのでちょうどいいのですごく気に入っています。」

 

- 屋号「らあめん 鬼ぼし」の由来は?

「煮干しですることを決めてから屋号を考え始めました。屋号だけでどんなラーメンか浮かぶようなのがいいと思って、煮干しで何か掛けた言葉を考えていてピン!と思い浮かんだのが鬼と煮干し。後付けなんですけど『鬼みたいに煮干しが効いた』みたいなのも屋号から思い浮かびますからね。」

 

- 朝ラー営業にしたのは?

「オープンしてからは普通のラーメン屋さんのように昼夜営業という感じでしたが、コロナの影響で夜が全然ダメだったんです。その頃に僕のダントツラーメンの師匠が独立して途中から朝ラー営業に切り替えたら調子よかったようで、僕にも『やってみたら?』と言ってきたんです。それで2021年から今の朝ラー営業に切り替えてみました。今の営業時間は朝6時から昼の15時までです。」

 

- オープン時からいきなり濃いセメント系を?

「普通の"鬼ぼしらあめん"と、マニア向けにしようと考えたエグみとか苦味があるドロドロ系の"鬼ぼしらあめん極"、この2種類で始めました。2種類ですることによって最初はこっちを食べてみて、大丈夫だったら次は極という感じにお客さんの棲み分けができるようになりました。毎月一本は限定も置いてやっています。」


◆鬼ぼしらあめん"極"


- 今後の展開は?

店舗展開は全く考えていません。全部自分で携わりたいし人もなるべく使いたくないので、繁盛店になってもここ一本のみでします。」

 

- 小野店主が大事にしていることは?

「手作りですね。麺だけ製麺業者さんから仕入れていますが、油、スープ、醤油(ダレ)、チャーシューなど全部自分で作っています。全部自分の目の届く範囲でやりたいので、そこで丁寧な仕事をしていきたいと思っています。」


◆店舗情報

らあめん 鬼ぼし

岡山県岡山市北区奉還町1-6-7

twitter:https://twitter.com/ramenoniboshi

オープン日:2020年6月8日

 (取材・文・写真 KRK 令和3年12月10日)