Vol.245:麺 昌まさ


 今回取材するのは兵庫県姫路市の「麺 昌まさ」。煮干しと鶏醤油で人気を博し、繁華街からかなり離れた場所なのに幅広い客層から絶大な支持を得ている人気店だ。ずっと気になっていたお店だったので、今回姫路に来る機会があったので取材する時間を作って頂いた。「麺 昌まさ」平松店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「神奈川県で生まれたんですが、すぐに姫路市に引っ越ししてきました。ここが地元です。」

 

- ラーメン屋をするきっかけは?

「元々はサラリーマンをしていて某企業の管理職をしていました。サラリーマンをする前は美容師とか技術的な仕事をしていて好きだったんですが、将来家庭を持ってと考えると福利厚生とかしっかりした所で働いたほうがいいのかなと思いました。その会社で16年ほど働いていましたが、納得がいかないことも多くなってきて悩んでいました。僕は凝り性な性格なので何でも知りたがってどんどん頑張ってしまう性格なんです。それで『それだったら自分自身のために頑張れる何かをしたいな』と考えて、1人や2人でも営業できる業種と考えた時にラーメンが浮かんできました。」

 

- 安定した会社からの転職に不安は?

「会社の管理職を辞めてラーメン屋を開業すると家族に相談したらもちろん大反対でしたね。『自分のためにやりたいねん!』と相談しても、嫁さんからは『仕事楽しいって言ってる人なんていないでしょう』と言われましたね(笑)。説得に半年くらいかかりました。」

 

- ラーメンをすると決心してからは?

「知り合いがラーメン屋をしていたので少しの間だけお世話になり、いろいろ学ばせてもらいました。その時に煮干しの出汁と出会って、自分の店も煮干しのラーメンでしたいと思いました。そして2015年11月にこの場所で開業しました。」


◆2015年11月4日オープン


- 屋号の由来は?

「私の名前の昌晃から昌を取って、親しみやすいように復唱する感じで『昌まさ』としました。嫁さんには馬鹿にされましたけどね(笑)。」

 

- 看板に「煮干し中華そば」と付けたのは、煮干しへの強い意志の現れ?

「その時は煮干ししか知らなかったんですよ(笑)。豚骨の炊き方も教わってはいたんですけど、やっぱり出汁が好きになったんですよね。」

 

- 自店の商品作りは苦戦しましたか?

「ラーメンのことがまだよく分かっていなかったので、自分なりに美味しいと思える煮干し出汁を模索していました。この地域に煮干しのラーメン屋さんが無かったので可能性はあると思っていたんですが、地元の製麺屋さんとかに『煮干しはこの地では無理。地域的に無理』とか言われたりしていました(笑)。でも絶対活路はあると信じていました。」


- オープン時のメニューは?

「あっさりと少しこってりの煮干し、その2種類でしていました。それからまぜそばを加えて、醤油も始めました。」

 

- 商品を増やしていくきっかけは?

「らぁ祭というスタンプラリーのイベントに参加することになった時に、自分自身もこの機会にいろんなラーメンを食べてみたいと参加したんです。大阪とか京都の参加店で食べて、店主さんがどれだけの想いでラーメンの個性を作り出しているのか知って驚きました。それから本物のラーメンを作りたいなと思って、少しずつ出来ることから始めていきました。焼豚から味玉、メンマ、自家製麺、最終的に地鶏を使ったスープ。一年ごとでラーメンをリニューアルしていますね。」

 

- 自家製麺導入のきっかけは?

「商品作りに没頭していく内に製麺屋さんと意見が合わなくなってきたんです。それで自分で納得いく麺を作るしかないなと思い、大和製麺さんで製麺機を購入しました。大和さんの研修の時に有名な粉屋さんが挨拶に来ていて"はるゆたか"で麺を作らせてもらったんです。その麺を持って帰って自店の煮干しスープに合わせたら凄く相性が良くて驚きました。それでその時の粉屋さんに相談して特別に使わせてもらうようになりました。全部良い素材で作ったらどこまで美味しくなるんだろうと興味があり、醤油も良いものを紹介してもらい使い始めました。」

 

- ほぼ全て自己流なんですね。

「はい。でもどこかで修行したら良かったと思うこともありました(笑)。」



- 水鶏系(鶏と水だけで作ったスープ)をするきっかけは?

「テレビ番組で東京の七彩さんが手打ち麺でオーダー来てから打ってるのを見たんです。『オーダー来てから熟成無しに麺が打てて、それで商品としてまとまるなんてどんななんだろう?』と思って、東京へ行ったんです。その時に他の店も食べてみようと数店舗を廻っていて、それで旧店舗時代の蔦さん(Japanese Soba Noodles 蔦)にも行ったんです。その時に蔦さんの水鶏系の醤油がとても美味しかったんです。麺の味が慣れ親しんだ味だなと思ったので店内に貼ってあったのを確認すると"はるゆたか"とか書いてありました。僕の使っている小麦が醤油ラーメンにこんなに合うんだと驚きましたね。煮干しより美味しく感じられたので、帰路の空港で『ああいう醤油ラーメンを地元の人達に食べてもらうことができないかな?』とずっと考えていました。帰ってきてから『まずは地鶏を探してみよう!』と動き始めました。」

 

- 行動が早いですね(笑)

クラブハウス(招待制の音声配信SNS)でトイ・ボックスの山上さん(当サイト記事)と知り合いお話をさせて頂いて、作り方など教わった訳では無いのですが地鶏をご紹介頂きました。そういう良い素材に出会い使うようになってから、作り方次第で美味しいラーメンにもなれば、美味しくないラーメンにもなってしまう。『もっと努力しないといけないな!』と改めて思って、それからはラーメン作りに更にのめり込んでいきましたね。」

 

- いつかは手打ちも始めそうですね(笑)

「実は最初は手打ちから始めたんですよ(笑)。製麺機を置く場所もなくて、京都の有名店の方に少し教えてもらって手打ちをしていました。しかし『麺が美味しい!』と替玉の注文が多くて、ラーメンの杯数が出なくて麺だけが無くなってしまう(笑)。これは製麺機が無いと絶対無理と思いました。」

 

- 今後やりたいことは?

「今のウチの煮干は"ご飯に合う出汁"という感じ。それとは違って不定期で生揚げ醤油を使った煮干しラーメンもしていて、そっちの方が醤油感が立っていてラーメンぽい気がしています。僕はそっちを凄く気に入っているので、今は変えるチャンスを伺っている感じなんです。現店舗では醤油や煮干しをストックする場所が無くて移転する場所をずっと探し続けています。姫路市で育っているので、他の地域ですることは全く考えていません。」

 

- あくまでも清湯のみ?

「地鶏の旨味を取りきれていないなと白湯を炊いて勉強していたこともありますが、僕自身があっさり好きなんです。」

 

- 平松店主が大事にしていることは?

「最近Qの平岡さん(当サイト記事)の店でラーメンを食べさせてもらって、食べたラーメンで素材や生産者さんのことが頭に浮かんでくる。そういうラーメンって凄いなと思いました。僕自身も食べ手の人にそういうのを伝えられるラーメンを作りたいと思っています。そして商品のことばっかり見てお客様のことを全く見れていなかったんですが、最近やっとお客様と話せるようになってきました。そういうコミュニケーションを大事にしていかないといけないと思っています。自分の想いって一つじゃない。ラーメンだけに熱意を注ぎ込んでも駄目。大切な時間やお金を使って来てくれるお客様、一生懸命働いてくれているスタッフ、皆に喜んでもらえるような店作りをしたいと思っています。」


◆店舗情報

麺 昌まさ

兵庫県姫路市北原1139-1

公式HP:http://www.menmasamasa.com/

twitter:https://twitter.com/gutsdasu1

Facebook:https://www.facebook.com/menmasamasa

オープン日:2015年11月4日

 (取材・文・写真 KRK 令和4年2月3日)