Vol.262:櫻井中華そば店


 今回取材するのは、神奈川県横浜市の「櫻井中華そば店」。全国的な知名度を誇る超人気店だ。店主とは約2年前にイベントを通じて知り合った時に取材をお願いしていたが、コロナ過もあってなかなか関東に行けなくて、今回、やっと取材が実現することになった。「櫻井中華そば店」櫻井店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「横浜の戸塚です。保土ヶ谷駅から二駅の所です。」

 

- 昔からラーメンは好きだったんですか?

「ラーメンは好きで、関東全域を食べ歩いていましたね。」

 

- ラーメン屋に興味を持ったきっかけは?

「高校卒業後、カメラマンの専門学校で勉強して、それから東京でカメラマンの修行(アシスタント)を27歳頃までしていました。でも、その頃になって『写真よりラーメンの方が好きだな』と気づいたんです。」

 

- ラーメン屋をしたくなったんですね?

「ラーメン屋で働きたいというよりは、ラーメン屋を持ちたかったんです。自分の店を持ちたかったんです。ラーメン屋になってからお金を貯めるというイメージが湧かなかったので、ラーメン屋へ向けて動くのは30歳と決めて、それまでお金を貯めようと働いていました。30歳になってから、独立へ向けて修行を始めました。」

 

- その期間もラーメン食べ歩きは続けていたんですか?

「所謂ラヲタという感じでラーメンを凄く食べていました。27歳から30歳までは、休みの度に1日3軒をノルマにして新店巡りなどしていました。当時は食べログとかTwitterとかもそんなに流行っていなかったので、超ラーメンナビを見ていましたね。」


- そして30歳になってからは?

「自分が食べ歩いた中で、どこでどういうのを自分が作りたいのか形を決めました。27歳の頃だと豚骨魚介が全盛期だったのでよく食べていたんですけど、食べ歩いている内に自分がしたいのとは違うなと思いました。淡麗で、自家製麺で、勉強になるお店で、と考えて浮かんだのが、麺や食堂さん、麺創研かなでさん、めじろさんでした。最初は麺や食堂さんに入って、それから麺創研かなでさんでもお世話になりました。修行期間は合計で7年間ほどですね。」

 

- 自店でやりたい、自分の味は浮かんでいた?

「こういう味にしたいなという理想はあるんですけど、実際に手を動かしてやらないと近づいていかないんですよね。今の段階でもまだ自分の味を追っている段階。なかなかこれだとはならないんです。」

 

- この場所に決めたのは?

「横浜市内でずっと探していたんですけど、1年ほどかかりましたね。ラーメン屋でもいいよって言ってくれる大家さんって少ないんです。自分の希望する条件内で探した中で、ココだけが『ラーメン屋をやっていいよ』と言ってくれたんです。」


2017年9月15日オープン


- 屋号「櫻井中華そば店」の由来は?

「誰が何を作っているか、すぐに分かるじゃないですか?『僕が中華そばを作るお店です』という意味です。色々捻った屋号っていっぱいありますが、『何の店で、誰が作っているのかな?』とか、僕にはピンと来ないんです。」

 

- 最初から醤油で勝負と決めていたんですか?

「醤油ラーメン屋しか考えていなかったですね。塩さえも本当はやりたくない気持ちでした。でも、お客様に楽しんでもらうために、塩も必要だと思いました。」

 

- 東京で、醤油勝負の難しさは?

「最初は誰も使っていない醤油で、それが美味しい醤油なら、それでオンリーワンじゃないかと考えていたんです。実際はそんなことはないんですけどね。当初は無意識の内に流行りを追った感じのラーメンを作っていて、鶏も凄い効かせていたりしていました。所謂鶏清湯です。『またこれか?』とか相当言われていましたね。鶏清湯に手揉み麺を合わせるというのは他にあまり無かったんですが、やっていく内に他店がやっていることの真似事にしか過ぎないと思うようになってきました。」

 

- それが2022年のリニューアルへ繋がるんですね?

「生揚げ醤油が効いている鶏清湯と考えると、ウチより美味しいお店は山ほどあるんです。僕がそういうのが好きなのでやり始めたんですが、先に走っている人たちを無意識に追っていたんです。そうしてやっていく内に、僕が今したいのはこのラーメンじゃないなとなってきて、一年前くらいにリニューアルを決意しました。」

 

- 自分の気持ちを抑えられなくなったんですね。

「ずっと醤油を変えたりスープの材料を変えたり色々していて、お客様も増えてきていたんです。リニューアル前は煮干しのラーメンもあって、鶏清湯と煮干しの二枚看板という感じでした。しかし、賄いとかで『魚介が効いている方が美味いな』と思い始めて、どんどんこっちの方(魚介を効かせた味)が美味いとなってきて、いよいよ自分の気持ちでも鶏清湯より今の味の方がいいとなったんです。」


中華そば 醤油


- リニューアルした商品について少し紹介して下さい。

「魚介も動物系も効かせた厚みのある淡麗で、鶏油も使わず、一手間かけた香味油を使っています。ウチっぽいラーメンを出しているお店は他にあまり無いと思います。」

 

- ずっと取り組んでいる手揉み麺への想いは?

「粉の配合とか凄い色々してきて、最大5種類混ぜた頃もあったんですけど、最近は手揉み麺ってそういうことじゃないのかなと思い始めました。手揉み麺は小麦の風味とか味よりも、食感の方が優先される麺だと思うんです。そう思った時に、食感に対して優れている粉を使うイメージになってきて、"ゆめちから"とか割と強めの小麦をメインに置くようにして、ちょっと柔らかめの小麦を外したりしたら、今は2種類の小麦しか使わなくなりました。僕も毎日食べていて、今はこういう感じがいいなと思っています。全粒粉とかも混ぜていた時期はあったんですけど、今思えば分かっていなかったなという感じです。僕が作りたい麺は、全粒粉を入れる意味のある麺じゃなかったなと今は思っています。色々試したいという気持ちもあるので、また入れることもあるかもしれませんけどね。」

 

- 色々試したくても、限定はあまりしないんですね?

「原因の一つは手揉みなんです。手揉みで1日1時間、長い時は1日1時間半ほどずっと手揉みしているんです。それが毎日なので、限定を出す仕込みや試作の時間を捻出できないんです。でも手揉みを好きでしているので仕方ないんですけどね。」

 

- お客様が増えてきている時期のリニューアルで、怖さは?

「めちゃくちゃ怖かったです。鶏清湯が一番評判良かった時期でしたからね。リニューアルして出す商品は、限定としてワンタンメンで出してお客様の反応も見ていました。リニューアル後は戸惑っているお客様も多かったように思いますが、今はもう定着している感じですね。」



- この店はずっと自分でやっていく?

「誰かに任せるようにするのは相当大変だと思うんですよね。そもそも大きくしたいとかよりは、自分の店を持ってやっていきたいと27歳の時に思って始めたので、今もそれは変わっていないんです。支店を出すぞと思えば出しますし、誰かに任せるぞと思えば任せるんですが、今はその方向へ必死に向かっているわけではありません。」

 

- 比較的早い段階で、世間の評価が一気に上がったことに戸惑いは?

「ありましたね。ありましたし、今もそうなんですけどだいぶギャップがあるんですよね。平日だと誰も歩いていない商店街まで、わざわざ電車に乗って食べにきてくれるお客様ばかりなんです。今はそんなに並んだりしないんです。評判だけは良いかもしれませんけど、現実が伴っていないという感じです。反対側がメインの駅なんですけど、こっち側に流れてくる人っていないんです。評判だけが先に行っているのにずっと戸惑いがあります。行列が長い時期もあったんですけど、今は土日は忙しいけど平日はそんなに並ばないし落ち着いています。」

 

- 櫻井店主が大事にしていることは?

「長くやるために色々気を付けていることはあります。この店は奥さんと2人で始めたんです。社員が独立したりアルバイトがやめたりとかはあるんですけど、奥さんがいなくなるというパターンは想定していないんです。ウチの店は、僕と奥さんがいるだけで昼営業は回せるので、それで生きていければと思っています。僕と奥さん、従業員とアルバイトで、無理なく仲良くやっていければと思っています。あとは作りたいものを作って、美味しいと思ってもらえるお客様が来てくれれば、それでいいですよね。」


◆店舗情報

櫻井中華そば店

神奈川県横浜市保土ヶ谷区岩井町53 稲村ビル 1F

twitter:https://twitter.com/sakurai_2017

オープン日:2017年9月15日

 (取材・文・写真 KRK 令和4年7月17日)