Vol.282:雲吞麺のお店 たゆたふ


 今回取材するのは、岐阜県多治見市の人気店「雲呑麺のお店 たゆたふ」。東京の名店で修行してきた店主が、現在、多治見市の居酒屋で昼限定間借り営業をしているお店だ。聞くところによるともうすぐ移転して店舗化するようなので、大きなターニングポイントが迫っている今、店主に取材をお願いした。「雲呑麺のお店 たゆたふ」森下店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「岐阜県多治見市です。ここが地元です。」

 

- 飲食するまでの経緯は?

「実家が家具屋で、高校が商業科だったのでパソコンや簿記とかの資格を持っていたので事務の仕事をしていました。初めて飲食の仕事をしたのは、結婚したタイミングでスガキヤで働き始めた時でした。当時は色んな業種を経験すると知識として学べるかなと思っていて、やれることはどんどん挑戦していました。」

 

- とても積極的な性格なんですね。

「人見知りなんですけどね(笑)。他には生粋のアニメヲタクなので同人誌を描いたりもしています。東京ビッグサイトや大阪のインテックスに行ったりしています。東方Projectというジャンルで娘と一緒に同人活動をしています。今、個人的にやりたいと思っているのは、ラーメンの漫画を書くことです。コミカルな感じで書けたらと思っていますが、今は書く時間がありませんね(笑)」



- 色々経験している中で、ラーメン屋を自分でするまでの経緯は?

「多治見に岐阜タンメンがオープンする時にオープニングスタッフとして働き始めました。まだ本格的に飲食に携わるというのは頭に無かったんですが、アルバイトとして一年経った頃に、店長が『正社員になりませんか?』と声をかけて下さったんです。子供もまだ小さかったので迷いましたが、家族からの後押しもあって正社員になりました。それからは小牧店や一宮店など系列の12店舗で働いて、新店舗立ち上げとかも経験させて頂きました。」

 

- 多くの貴重な経験を積んでいたんですね。

「岐阜タンメンで6年ほど経った頃、周りのスタッフが暖簾分けとか独立とかで次のステップへ向かうことが続いたんです。それを見ていて、『自分も何かしてみたい。地元・多治見に貢献できるような何かをしたい』と思い始めました。」

 

- その何かとは?

「常連で通っていた(現在間借り営業をしている)『居酒屋串もんず』のオーナーさんに『ラーメン屋を自分でやりたいんですよね』と相談したら、東京の支那そば大和さんを紹介して下さったんです。」

 

- 地元を離れて東京での修行に迷いはなかったんですか?

「支那そば大和さんのラーメンを実際に食して、この美味いラーメンを地元で広めたいと思い、単身で東京へ行くことを決めました。ラーメン屋での経験があることと、(当時)緊急事態宣言中ということで、短期間で叩き込んで頂きました。」


2021年8月6日オープン


- 自店をどこでするかは決めていたんですか?

「多治見や瑞浪、可児とかで物件を探していたんですがなかなか見つからなかったんです。そんな時に串もんずさんが『昼にお店を使ってもらっていいよ』と言ってくださったので、2021年8月6日から間借り営業を始めることになりました。」

 

- 間借りでの商品は?

「修行店で多くのことを学んできましたが、この場所でメニューを多くすると、キャパの問題、食材を保管する場所とかで難しいので、現在は絞ったメニューでしています。」

 

- 屋号の由来「雲呑麺のお店 たゆたふ」の由来は?

「揺蕩う(たゆたう)という言葉がありますけど、意味としてはふわふわ漂っている感じ。それがワンタンに合うと思いました。もう一つの意味合いとしては『心が定まらない』とか『決心が決まらない』。そういう気持ちとか落ち込んでいる人達がうちのワンタン麺を食べて、少しでも幸せな気持ちになってもらえたらなという意味も込めています。『たゆたう』の最後を『ふ』に変えることによってフワフワ感を出したくて『たゆたふ』にしました。」

 

- かなり拘った屋号なんですね!だいぶ悩みましたか?

「雲呑麺が看板のお店なので、当初は中華っぽい名前がいいのか迷いましたが、最終的には和風な感じがいいと思ったので平仮名の屋号にしました。」



- 商品の紹介をお願いします。

「使っているスープは三位一体という形。煮干しと節系の出汁を2種類(煮干し+うるめ、煮干し+鰹&鯖)を作っていて、もう一つは前日に4時間炊き込んだ肉出汁です。お肉は岐阜の瑞浪にあるボーノポークです。他にも干し海老の戻し汁、昆布と椎茸のお出汁。動物系の旨味と甘味がプラスされて、しっかりお出汁が出た煮干し系スープです。ウチの娘曰く『スガキヤの味だね』って(笑)。カエシは白醤油をベースにしたものです。本来なら黒醤油のカエシもあるんですけど、間借り営業中はメニューを制限しているので白スープ一本でしています。」

 

- 看板のワンタンへの拘りは?

「肉ワンタンは部位と配合にこだわり2度引きした国産ひき肉を使用。脂の旨味とコクがあり、肉汁ジューシーに仕上がっています。海老ワンタンは目に見えない汚れや臭いを下処理段階でしっかり取り除き、食感を出す為に粗めに刻んでプリプリ感を楽しんでもらえるようにしました。ワンタンの皮も薄く、チュルンと喉越しの良い物を使用しています。

 スープ・ワンタン・麺・チャーシュー・メンマなど全てにおいてオープン以降も日々ブラッシュアップを重ねてきました。この子達はまだ美味しくなれる!と確信しながら現状に満足せずこれからも進化させていきたいです。」

 

- 修行店のワンタンの系譜を引き継いでいると思いますが、違いはあるんですか?

「同じ『てるてる坊主型』ですが、修行店や八雲さん(修行店の出身店)、店ごとに味は違っています。自店のワンタンの味は関東の強い味付けと違って、緩和した感じの味にしています。この地域にはワンタンに特化したお店が無かったので、ウチが広めようと思ってワンタン民というワードを作りました。『これであなたもワンタン民!』という決めゼリフがあるんですが、ワンタン民をジワジワと増やす事が野望→ワンタン民増殖計画みたいな遊び心も加えて、ワンタンを好きな人を増やしていきたいです。」



- 森下店主が大事にしていることは?

「私がラーメンを食べるのも作るのも好きなんですが、でもずっと仕事仕事となってしまうと家族を犠牲にしてしまうんです。過去に岐阜タンメンで夜勤(深夜3時まで営業)とかもしていたので娘を泣かせてしまったことがあったんです。家族を困らせてはいけないとその時に思いました。プライベートを充実させないと仕事もうまくいかない。なので今は月に一回は日曜と月曜に家族のために休みをとっています。娘と一緒に本やグッズを作ったりして、色んな所へ遠征して趣味を謳歌しています。

 

 そしてラーメンもきっちりしていかないといけません。ウチの店はスタッフも女性が中心なんです。だから女性のお一人様客も多いんです。話を聞くと『入りやすい。女性が多いから安心できる』とのことです。そういうのも踏まえて、いろんな方に来てもらえる、安心感が与えられるお店作りが大事だなと思っています。誰でもウエルカム。ウエルカムワンタン民。自分達だけでは何もできないので、まずはお客様のお話を聞いて一緒に何か作れたらいいな。遊びじゃないですが、とにかく、いつでも楽しいという気持ち、子ども心を持った感じでこれからもラーメン屋さんをしていきたいと思っています。万人受けするラーメンは難しいですが、誰が食べにきても8〜9割のお客様に美味しいと思ってもらえるラーメン屋でありたいと思っています。」



◆店舗情報

雲吞麺のお店 たゆたふ

岐阜県多治見市宝町5-98

twitter:https://twitter.com/tayutafuwantan

instagram:https://www.instagram.com/tayutafu.wantanmen/

オープン日:2021年8月6日

 (取材・文・写真 KRK 令和5年3月26日)