Vol.283:しじみ処 かみあり製麺


 今回取材をするのは出雲市の人気店「しじみ処 かみあり製麺」。出雲大社への道中、大きな駐車場が満車になっているラーメン店があるので気になっていた方も多いだろう。SNSでの発信も積極的で、ラーメン愛に溢れた限定の数々に驚かされる。今回、島根市へ行く機会があったので、店主に取材をお願いした。「しじみ処 かみあり製麺」栂野店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「島根県出雲市です。」

 

- ラーメン屋をするまでの経緯は?

「今もしているんですが、本業が水産の仕事なんです。10年前くらいに蜆(シジミ)を若い人達に食べてもらうにはどうしたらいいかと考えて、蜆ラーメンを作ったらどうかなと思ったのが始まりでした。」

 

- 飲食での経験はあったんですか?

「小さい頃から祖父が外海の漁師だったので新鮮な魚を食べる機会が多かったんです。だから名前は分からないけど、美味しいか美味しくないかは分かるという感じでした。そして両親が惣菜店をしていたのでお手伝いをしていました。大学で岡山にいた時も、授業に行かず卜傳さんで3年間働いていました。父の体の調子が悪かったので、いずれは家業を継ぐことになると思っていました。」

 

- 蜆ラーメン屋をしてみようと思ってからは?

「ラーメンを食べる習慣も無かったので、ラーメンのことが全然分からなかったんです。それでネットで見つけて面白そうだと思った大和製作所のラーメン学校で1週間勉強してきました。」

 

- 大和のラーメン学校では?

「全てのスープの取り方を教えて頂きました。蜆ラーメンをしたかったので蜆を持って行ったんですが、蜆から出汁を取ったラーメンはその時はできなかったですね。でも製麺を教えて頂いて、とても麺が美味しいと驚きました。それまであまりラーメンを食べる機会もなかったんですが、今まで食べてきた麺とは明らかに違うと感じました。」

 

- 出雲へ戻ってからは?

「蜆ラーメンを作るために自作を続けました。大和ラーメン学校から戻って3ヶ月経った頃にお店をオープンしました。」


2012年4月26日オープン


- 屋号「しじみ処 かみあり製麺」の由来は?

「かみありは神在月からです。10月は全国的には神無月(神の無い月)と呼ばれていますが、出雲では旧暦の10月に全ての神が集うので『神在月(かみありづき)』と呼ばれます。屋号を考えていた時に『地元らしい名前がいい』と思いました。蜆も地元のものですからね。」

 

- この場所は?

「元々、ここで水産の仕事をしていて、事務所を改装して2012年4月26日にオープンしました。」

 

- オープン時の商品は?

「蜆や蛤を使った商品、3種類ほどで始めました。スープは鶏と豚の白湯に蜆を合わせたものでした。」

 

- お客様からの反応は?

「当時は蜆をのせたりせず、蜆の出汁を取ってラーメンを作っていたんですが、お客さんから『これ、全然貝が入ってないよ!』と苦情があったんです。蜆出汁は今よりもかなり強く出していたんですがね。他には油が少ないとかも聞きましたね。」

 

- お客様からの意見を聞いてから?

「それからラーメンを食べ歩くようになりました。それまでは食べ歩きもせずに自己流でガラパゴス的にしていて、これで成立すると勘違いしてしまっていたんです。ラーメンとはどんなものか勉強するために、山陰だけでなく、色んな地域に食べに行っていました。」

 

- 他店を食べ歩いて、一番変わったのは?

「綺麗な盛り付けですね。僕が目指しているのは『ラーメンはそんなに』って感じのお客さんが美味しいと食べられるラーメンなんです。」

 

- 貝をのせるようにしたのは?

「お客さんから『蜆が入ってないよ!』と言われた時、『こんなに入ってるのになんで?』と思ったんです。それで蜆をのせてみるととても評判が良かったんです。その時に『あっ、これか!』と視覚効果の重要性に気づきました。もちろん味もついていかないと長くは愛してもらえないので、味の方も頑張っています。」



- SNSでよく見る女の子のキャラクターは?

「オープンする時に何よりも先に自分で作ったものです。名前が"しじみん"です。ジブリの映画とかで動物が主人公の代弁者で、映画を観ている人に分かりやすく伝えられる効果があります。僕が表に出るより、しじみんのようなキャラが出る方が印象が良くなるし角も立たないんです。」

 

- 現在、同業者との繋がりも多そうですね。

「SNSで色んな店主さんと繋がるようになって、お酒を呑んだりして交流を広めています。出会った店主さん達がとても良い人ばかりで、多くのことを教わりながらブラッシュアップを続けています。」

 

- SNS発信で限定も積極的にしていますね。

「限定には色んな思いがありますが、僕が夜ご飯をあまり食べないんです。だから朝、店に来て昼食に何を食べたいか考えるんです。自分の食べたいと決めたものを限定として作って、お客さんにもお出ししているんです。」



- 宍道湖の蜆について聞かせて下さい。

「蜆は日本だけでなく韓国や台湾、沢山産地がありますが、宍道湖の蜆は味が全然違います。蜆の問屋という仕事は30年ほどしていますが、宍道湖は凍らないので年中採れるので生産量も日本で一番です。」

 

- 若い人に蜆を食べてもらうという目標は?

「蜆の美味しさを伝えることはできていると感じています。当初は多くのラーメン屋さんにも蜆を使った商品を普及したいと考えていましたが、なかなか難しいです。蜆から出汁をとるとか、蜆のカエシを作るとかなかなか大変ですしね。」

 

- 栂野店主が大事にしていることは?

「食というのは楽しくないと美味しくないと思います。みんなが喜んでもらえるものをここで作り続けていきたいです。お客様の経験や想像を一ミリでも超えるものを作りたいと思っています。」

 

- 蜆普及のために始めたわけですが、ラーメン屋を11年間してきて今の心境は?

「毎日が楽しくてしょうがないです!」



◆店舗情報

かみあり製麺

島根県出雲市斐川町学頭1815-1

twitter:https://twitter.com/KAMIARI_SEIMEN

オープン日:2012年4月26日

 (取材・文・写真 KRK 令和5年4月2日)