Vol.319:ぶっとび亭


 今回取材するのは山口県柳井市にある「ぶっとび亭」。柳井港の目の前にある人気店だ。知人の店主に聞いたところ、ぶっとび亭の店主は相当濃いストーリーの持ち主らしく、色々と話を聞くのが楽しみだ。「ぶっとび亭」廣田店主にKRK直撃インタビュー


- ご出身は?

「山口県柳井市です。」

 

- 昔からラーメンは好きだったんですか?

「特にラーメンだけが好きというわけでなく、時々、近所のどさん子さんとかで食べていたくらいでした。19歳の時に東京へ行き、東京で大学に通っていた兄の所で居候することになりました。アルバイトをしながら時々ラーメンも食べに行っていました。当時は麺屋武蔵さん、一風堂さん、青葉さんとかが世に出てきた頃でしたね。」

 

- 何をするか模索していた時代なんですね。

「家で兄とテレビを観ていた時に『あいのり』とか『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』とかやっていて、兄が『お前、応募してみろよ』と言ってきたんです。当時、生ダラの企画でB21のデビット伊藤さんが一風堂さんに弟子入りしてラーメン屋を開業するという企画があったんです。僕はテレビに出たいとかの気持ちはなかったんですが、兄が履歴書を書いてあいのりと生ダラへ送ったんです。」

 

- 結果は?

「あいのりは書類審査で落選しましたが、生ダラの方で面接に呼ばれて、渋谷の道玄坂に作っているところだったデビット伊藤さんのお店のオープニングスタッフとして決まりました。それから一風堂のスープ工場へ研修に行ったりとかありましたね。」

 

- デビット伊藤さんのお店に入ってからは?

「いきなり現場に入ってスープを作ったりしていました。その時に初めて『ラーメンってこうやって作るんだ』と分かりました。お店で出していたラーメンは鶏と豚と野菜のスープをそれぞれ作って合わせる三味ラーメンという商品でした。」

 

- 人気番組が関わっているお店だから忙しかったでしょう?

「当時タイムカードを押して、帰る時は36時間後とかありましたからね。でも当時は若かったので寝ずにできていましたから。それから日本テレビさんから契約社員になって欲しいとの話があり、日本テレビの子会社に入ることになりました。19歳の頃でしたね。北海道の小樽に横浜のラーメン博物館のような集合体、小樽運河食堂を作ろうという話でした。一風堂さん、すみれさん、くじら軒さん、大勝軒さんの中にデビット伊藤さんのお店が入り、僕はそこの店長として働き始めました。三味ラーメンを出していました。売れるのは売れましたが、約3年ほどで小樽を離れることになりました。」

 

- 次はどこへ?

「小樽運河食堂に別ブランド店を出店していて知り合った東京のちばき屋の千葉さんから『福岡のラーメンスタジアムで働いて欲しい』と話があり、修行みたいな形で福岡へ行くことになりました。でもラーメンスタジアムのちばき屋さんの契約が一年だったので、一年後にお店も撤退することになりました。」



- 動きが活発ですね(笑)

「一旦ラーメンから離れて何をしようかと考えていた時に、とりあえずバックパッカーでインドやタイとか廻っていました。そして帰国した時に自分でラーメン屋をしようと決心しました。25歳の頃ですね。隣町に田布施という町があって、そこで僕の最初のお店、麺屋アジトというお店を始めました。魚介系のラーメンで今と使っているものはあまり変わりませんが、当時はちばき屋やくじら軒とかの影響をちょっと受けていて今よりサバ節が利いている感じでした。」

 

- 初めての自分のお店は順調でしたか?

「常連さんも増えてきて順調でしたが、5年ほど経った頃にデビット伊藤さんから香港に出店するから一緒にして欲しいと話がありました。面白そうなので麺屋アジトを売って香港へ行くことを決めました。」

 

- 激動の人生ですね!

「香港で働いている時に、アルバイトで入ってきたのが今の妻でした。そのお店でしばらく働いてから香港で独立しようという気持ちになって、共同出資のパートナーを見つけて『巨一麺堂』というお店を始めました。基本的に味噌、塩、醤油と一通りあるお店でした。」

 

- 日本へ帰国した理由は?

「香港で結婚し2人目の子供ができた頃に子供の教育のことなど妻と話し合い、日本へ帰国することを決めました。帰国したのが香港の大規模デモがあった半年前くらいでした。」


2017年4月11日オープン


- 日本に帰国してからは?

「またラーメン屋をしようと思い、柳井市のこの場所が空いていたので2017年4月にオープンしました。」

 

- 屋号「ぶっとび亭」の由来は?

「分かりやすい名前にしようと考えて、ニュアンスだけで決めました。」

 

- お客さんは地元の方が多いんですか?

「地元の人が8割ほど、船のお客さんが2割という感じですね。インバウンドとかはほとんどいないです。住んでいる外国人もいませんので、町にいる外国人はウチの嫁くらいですね(笑)。」



- ぶっとび亭の商品の紹介をお願いします。

「スープは鶏のモミジと拳骨、イリコ、香味野菜がベースになっています。イリコは大島のイリコ、鶏は岩国の鶏、なるべく山口の素材を使っています。醤油は隣町にあるいちまる醤油さんの醤油を使っていて、中華そばには大冠という醤油、背脂の方はさしみ醤油を使っています。」

 

- 麺も地元の麺ですか?

「当初は小樽運河食堂で知り合ったカネジン食品さんの麺を香港でも今のお店でも使っていたんですが、コロナ禍になって流通ルートとか考えて近場の麺屋さんを使おうと思い始めていた時にたまたま宇部の木嶋製麺さん(木嶋製麺所)との出会いがありました。それで今は木嶋製麺さんに麺を作ってもらっています。」

 

- 廣田店主の大事にしていることは?

「ラーメン屋の生活が体の一部みたいになっているので、そのライフワークが続けられるところまでしていこうと思っています。」



◆店舗情報

ぶっとび亭

山口県柳井市柳井134-24

instagram:https://www.instagram.com/buttobitei/

オープン日:2017年4月11日

 (取材・文・写真 KRK 令和6年5月21日)