
今回取材をするのは京都市の人気店「麦の夜明け」。長いラーメン文化がある激戦区「京都」で2022年にオープンして以来、多くのメディアで取り上げられたり、京都ミシュランでビブグルマンに選ばれたりして瞬く間に京都屈指の人気店まで上り詰めた話題店だ。「麦の夜明け」伊藤店主にKRK直撃インタビュー!
- ご出身は?
「兵庫県の三田市です。」
- 昔からラーメンは好きだったんですか?
「小学校の頃からカップラーメンが大好きで、卒業式にみんなで将来の夢を言っていく時にみんなが野球選手、サッカーとか言っている中、僕は日清食品と言っていました。」
- カップラーメンだから、ラーメン屋じゃないんですね(笑)
「そうなんです。カップラーメンが大好きでしたから日清食品の開発をやりたいと思っていました。当時は地元にはあまりラーメン屋がありませんでした。」
- 夢を叶えるために?
「日清食品に入るためには関関同立以上の学歴が必要でしたから、勉強して同志社大学に入りました。」
- 同志社に入学してからは?
「京都のラーメンにハマりました。最初にハマったのはすがりさん(和醸良麺 すがり)でした。それから鶴武者さんと麺屋裕さんに通っていました。下宿していたのもあってラーメンばかり毎日食べていましたね。」
- ラーメン屋で食べる機会が増えることによって気持ちの変化は?
「ラーメンを自分で作りたくなり、学園祭でラーメンを出してみたいと思いました。それで同志社大学 拉麺研究会というサークルを自分で立ち上げました。そのサークルには100人くらい集まりました。」
- そのサークルではどんな活動を?
「基本食べ歩きがメインで、一部の熱意あるメンバーは自宅でラーメンを作っていました。」
- ラーメンを自分で作っていた時の気持ちは?
「その時にはもうラーメン屋をやりたいという気持ちになっていました。自分で色々とラーメンを作っている内に自分のラーメンに自信も出てきていましたし、学園祭でも凄く売れましたのでやってみたいと思いました。」

- ラーメン屋をしたいと決めてからは?
「ラーメン屋ってストーリーが大事かなと思いました。どこ出身とか、前職がどうとか、売れている店はそういうストーリー作りからしっかりしているなと思っていました。それで自分には製粉会社に入るのが一番合ってるかと思いました。ラーメンに関わる調味料メーカーとかも考えたんですが、ラーメン屋さんと一番関われる仕事となると製粉会社と思いました。あんまり製粉会社出身のラーメン屋さんって聞かないですしね。それでニップン(日本製粉)に就職しました。」
- 製粉会社での仕事はどうでしたか?
「運良くラーメン屋さんと関われる業務用小麦粉の営業の部隊に配属されました。東京だったんですけど5年ほど製麺所への営業とかしていました。その間に東京のラーメンを食べる機会も多く持てました。」
- 製粉会社で学んだ強みは?
「研究所みたいなのがあって、そこで例えば『某ラーメン屋のこの麺を真似して欲しい』という依頼が他の店からあったりします。そのために研究所の人とその店へ食べに行って、この切刃でこの粉でしたらいいとか一緒に話し合ったりしていました。だから大体この粉を使ったらこうなるとか頭の中にある程度は知識が入っているんです。」
- ニップンでは何年?
「5年間お世話になりました。今でも応援してくださっていて、ニップンの粉も使っています。」
- ニップンを離れるきっかけは?
「自宅で自作をずっと続けていて、割とこれかなというのが出来てきました。山椒と白醤油を使った今の商品の原型となるラーメンでした。」
- 山椒を使い始めた理由は?
「大学生の時から京都のラーメン屋さんと仲良くさせてもらっていたので京都でやりたいと思っていました。それで京都でするならやっぱり京都らしさが必要と思いました。」
2022年2月17日オープン

- 京都の場所は?
「会社を辞めて京都へ戻ってから探しました。目の届く範囲でやりたいので、10坪くらいのカウンターだけの物件を探していました。」
- 屋号「麦の夜明け」の由来は?
「製粉会社にいたので小麦の"麦"は入れたいと思いました。夜明けは新しいラーメンを世に出していきたいという気持ちで夜明けにしました。」
- オープン前に埼玉のラーメンWalkerキッチンに出ていた経緯は?
「新しくラーメン屋をする人を応援する企画があって、審査を通った人はラーメンWalkerキッチンの一日店長をやれるという内容でした。そこに応募して審査に受かったので貴重な経験をさせて頂きました。SNSのフォロワーもかなり増えたりしましたね。」
- オープン時の商品は?
「最初はホタテと牛の2種類でオープンしました。"ホタテと山椒の中華そば"は自作の時からずっと作っていた商品です。」
- 製粉会社からラーメン屋ということで、やっぱり麺への注目度が高くなりますよね。
「前の会社にいた時からこういう麺かなと決めていました。あまり誰も使っていない小麦粉を使いたいなと思って山口産せときらら。最近使う店が増えてきていますけど、当時はウチが初めてくらいだったと思います。形状はみんなに馴染みのある平打ちの細麺にしました。つけ麺の麺には山椒を練り込んでいて、うどんの粉を使っていてカンスイもほぼ入れていません。ほぼ"うどん"みたいな感じの麺です。」

- かなり早い段階でミシュランビブグルマンに選ばれていましたね。
「ミシュランはオープンした時に考えていた最大の目標だったので、オープンして7ヶ月目で選んでいただいて『こんな早くに?』と驚きました。」
- 周りの過剰な期待に追いついていけていましたか?
「やっぱりしんどかったですね。とにかく品質の向上を常に考えて昨日より美味しいのを作り、目の前のお客さんにどう喜んでもらうかを考えていました。」
- 伊藤店主が一番大事にしていることは?
「メイドフォーユーといつも自分の中で言っているんですけど、お客さん一人一人のためにラーメンを作って喜んでもらうというのを大事にしています。あとは唯一無二のラーメンを作ることです。限定とかの試作をしている時も、『これ、他所でも食べられるよな?』と思ったものはやりたくない。ウチでしか出せないものを出そうというのを大事にしています。」

◆店舗情報
麦の夜明け
京都府京都市下京区七条掛越町12-5
X https://twitter.com/mugino_yoake
instagram https://www.instagram.com/mugino_yoake/
オープン日 2022年2月17日
(取材・文・写真 KRK 令和7年9月19日)