Vol.96:そらみち


 北陸新幹線の開通でますます注目されている北陸最大の観光都市"金沢"。近年、多くのラーメン店が集まってきて、金沢市内はラーメン激戦区となりつつある。その中で最も注目されているラーメン店が"そらみち"だ。

 2015年にオープンし、鶏と水だけをベースにした清湯"水鶏系"と"煮干し"、当時、金沢に無かった強力な二本柱で瞬く間に人気店に上り詰めて、いつの間にか某グルメサイトで石川県1位に評価されているお店になった。今回、夜営業が終わった後に話す時間を作っていただいたので、謎の部分が多い店主にいろいろ聞いてみようと思う。"そらみち"青山店主にKRK直撃インタビュー!


- 出身は?

「石川県の能美市です。金沢市の高校へ行き、大学で埼玉へ行きました。大学時代に出会った3人で今のお店をしているんですよ。2人は東京と埼玉からこっちへ来てくれたんです。」

 

- ラーメンを好きになったきっかけは?

「(石川県の)地元を離れて埼玉の大学へ行った時、米と魚が口に合わなかったので困りました。それで何か食べるものが無いかなと考えていて、偶然に某店でラーメンを食べて『ラーメンってこんなに美味いんや!』と衝撃を受けました。(石川県の)地元ではラーメンをあまり食べたことが無かったので、それから関東でいろんなお店で食べていると、そういう衝撃を受ける美味しいお店が山ほどあって驚きました。その頃が2000~2003年頃の第3次ラーメンブームで、Wスープとかが出てきてて、食べに行った全ての店がとても美味しかったんです。」

 

- ラーメンにどんどん嵌まっていったんですね。

「大学でボクシングをしていたんですが、ラーメンの影響で減量が上手くできなくて会長によく怒られていましたね(笑)。減量中は行きたい店をノートに書いたりして我慢していました。当時は大崎さんや石神さんのラーメン雑誌を読みながら、ドキドキしていました。TRYなんて、もうバイブルでしたね。」


- ラーメン屋をしたいって気持ちはあったんですか?

「大学時代は全く無く、食べ歩きを楽しんでいただけです。大学卒業した後、事情があってボクシングを日本でできなくて、試合ができたらなと海外へ渡りました。オーストラリアやカナダです。海外となると食も全然違うので、日本の食文化の素晴らしさを再発見しました。」

 

- 帰国してからは?

「日本に帰ってきて、もちろんラーメンも好きでいろいろ食べていました。その頃に友達が飲食店を立ち上げるからってことで、僕も帰国してまだ仕事が無かったので手伝っていました。下北沢でフライドポテト専門店とかしていましたね。それでいくつかのお店の立ち上げに携わっていた時に、自分も何かやってみたいなって気持ちになりました。

 その時にたまたまラーメン屋で修行経験がある人と知り合って、『ラーメン屋ってどうですか?』っていろいろ聞かせてもらいました。その人が『大変だけど、お客さんに目の前で直接喜んでもらえるのでやりがいがある』と言っていて、それで僕もそういう仕事をできたらなと考え始めました。その時に聞いた言葉で今でも憶えているのが、"好きこそ物の上手なれ"です。やっぱりいろんな日本の食文化の中でラーメンというものが自分は本当に好きで、飲食の中でいろんな選択肢があるんですが、自分の好きなことをやりたい。好きなことをやるなら、大好きな地元でやりたいと考えました。」


そらみち(2015年10月27日オープン)


- 屋号の由来?

 「それは僕ら3人だけの秘密なんです。すみません。」

 

- 店の場所は悩みましたか?

「地元が大好きなので、石川県に戻ってきて自分なりの形で地元に恩返しをしたいと考えました。やっぱり地元に無いものを出したいと思いました。」

 

- ラーメンは自己流?

「何も分かっていなくて、埼玉の自宅で自作をしていました。金沢へ来て驚いたのが、食材がこっちでは入らないんですよね。それでまずは流通経路の開拓からでしたね。生産者さんに会いにいくところから始めて、今でも月一研修では生産者さんの所に見学に行かせてもらうことが多いです。」

 

- 青山店主が最も影響を受けたお店は?

「僕が今でも何よりも追いかけているのが嶋崎店主(現・ロックンビリーS1店主)です。嶋崎店主の店にはTRYに載っている頃に食べに行ったんですが、『なんだこのラーメンは!』と衝撃を受けました。麺のしなやかさだったり、ああいう醤油感、叫びたくなる味のラーメンに感動しました。嶋崎店主は師というよりは"神"です。今でも月一は尼崎市のお店へ通っています。

 地元では金沢市の神楽さん(自然派ラーメン 神楽)。出汁文化をずっと体現し続けている方で尊敬する先人です。ラーメン屋を始めてからは、ご縁があり何回も通っていたトイ・ボックスさんや四つ葉さんともお近づきになれました。素晴らしい方達で、ラーメン屋としても人としても目標であり師であり兄貴だと思っています。」



 - オープンしてから順調でしたか?

「金沢に来てから水の違いで悩みに悩んでいます。東京でできていたことが、ここでは全く再現ができない理由も分からない。迷ってラーメン屋をやめようかという時もありましたね。お客様が夜とか二人だけとか、午前中も『店開けていて、何か意味あるのかな?』というほどで、ほぼ毎日スープを全部捨てているという時期がありました。僕らも試作の毎日からの睡眠不足でノイローゼとかでぶっ倒れてしまったりとか。とにかく3年間は修行だと思って作り続けています。自分が感動したラーメンの形を、何とか石川県で出していけるようにと頑張っています。」

 

- 京都の"とうひち"袖岡店主とも交流があるんですね。

「自分のラーメンに悩んでどうしようかとなった時に、最後にもう1回、追いかけている嶋崎店主のラーメンを食べてから考えようと思いました。その行く途中に京都のとうひちさんでラーメンを食べた時に驚いたんです。僕の中で京都はずっと第一旭のイメージ、豚清湯だったり豚の白湯、豚の文化のイメージがあったので、鶏清湯で生揚げ醤油、え~嘘やろ~と衝撃を受けました。」



- 麺については?

「煮干しと白湯は三河製麺さんから、中華そばの麺は地元の石川製麺さんです。石川製麺さんは自分たちの麺で国産小麦のみというのに挑戦してくださっています。効率という面では東京の技術のある製麺所さんの方がいいんでしょうけど、石川製麺さんの場合、自分が美味しい店を紹介するとすぐに遠くのお店でも何回も通ってくれたりします。僕ら以上に麺への想いが強くて、もっと美味しい麺を作りたいといつもおっしゃっています。僕らは頭が上がらない存在なんです。」

 

- 地元を背負う人気店となった今、プレッシャーを感じていますか?

「食べログとかもあまり分かっていなくて、お客様に教えてもらって知りました。オープンの時から変わらないんですが、お客様が増えようが減ろうが、来店してくれた一人のお客様に対してのプレッシャーというのは、今後、美味しいのができるようになって繁盛していっても変わらないと思います。グルメサイト見てきた方でも、近所のおっちゃんだろうと、そこは変わらないです。どの方に対してもウチに来て食べてくれるということが感謝なので、精一杯美味しいものを作って喜んでもらえるように。僕らはそれしかできないですから。」

 

- 青山店主の拘り?

「拘りと思っていることは何も無くて、当たり前と思ってしています。尊敬している先輩方がそういう姿勢で取り組んでいる方ばかり、そんなことを微塵も感じさせず当たり前のように仕事している方ばかり。だから自分が拘りという言葉を使うのがおこがましい。できることを精一杯やっていく。お手本となる先輩方が示してくれている道。僕ら自身のラーメンの道を大事に進んでいきます。」


 <店舗情報>

■そらみち

住所:石川県金沢市窪7-281 ヴィアーレ伏見台 102

Twitter:https://twitter.com/soramichi_3

Facebook:こちら

 

 (取材・文・写真 KRK 平成30年7月13日)