Vol.167:ラ~メント~ク④


 集まれない、店に取材に行けない、ラーメンさえ食べに行けない!こんな逆境を逆手に取った新企画「ラ~メント~ク」。ラ~メント~クとは取材店とLINEやFacebookで専用グループを作り、その中で同時刻に集まりラーメントークをする企画。

 今回は「この企画でしか実現不可能!」な海外組の夢トークが実現!今回のゲストは、世界で活躍する3人のラーメン職人、そして「関西ラーメン女王」釈京子さん。時差の関係でトークする時間の調整が大変でしたが、遂にスタート!!


◆本日のゲスト

西岡 津世志:ラーメン荘グループ創設者、Yume Wo Katare Boston

大西店主:Tsurumen Davis(アメリカ) 

西川店主:Ramen NIKKOU(オランダ) 当サイト内記事

釈 京子当サイト内記事



◆自己紹介をお願いします。

●「Yume Wo Katare」西岡店主(以下、「西岡」と略)

「西岡津世志と申します。ラーメン荘グループ創設者。ボストンで『Yume Wo Katare』という名前の夢を語るラーメン屋と『Yume Ga Arukara』という名前の夢を感じるうどん屋、日本の別府で『夢を語れ総本店』という名前のラーメン店を出しながらこれから『夢を語れ』を全国に出す仲間を育ててます。」

 

●「RamenNIKKOU」西川店主(以下「西川」と略)

「西川浩司です。彦根で『ラーメンにっこう』を15年目。今はオランダ王国デルフトにて『RamenNIKKOU』をやっています!」

 

●「Tsurumen」大西店主(以下「大西」と略)

「Tsurumenの大西益央と申します。ボストンで『Tsurumen Davis』という名前の1000日間のみ限定営業のラーメン店をやってます。」


◆ラーメン屋になろうと思ったきっかけは?

●西岡

「もともとラーメン好きではなくて、芸人時代に相方に連れて行かれたのがラーメン二郎でした。普段ラーメン屋でもご飯もの注文してたけど、その店にはラーメンしかなくて、しゃーなしにラーメン食べた時に衝撃を受けて、気がついたらハマってました。ラーメン屋になりたいと思ったのではなく、このラーメンを作りたいと思ったのがきっかけです。ラーメンに興味が出たのは最近です。毎週火曜の昼だけ中華そば専門でやってます」

 

●釈京子(以下「釈」と略)>> 西岡

「最近っ!!(笑)」

 

●西川

「元々はなろうとしてなかった(笑)。教職の採用試験落ちて、次の試験までの一年何しようと思って始めました。ラーメンは好きでずっとバイトしていたので、作ってみたいという気持ちはありました。」

 

●大西

「子供の頃、家がかなりの貧乏でほぼ外食しない家庭でした。そして唯一の外食が『ラーメン』でした。団地の前にあった『第一旭』と『スガキヤ』に連れて行ってもらうのが贅沢でした。そして、テレビのロードショーで観た『タンポポ』でラーメン屋という職業を意識するようになりました。」


◆お互いの印象は?

●西岡

「西川くんはセンス。大西さんは努力の人で優しいし、信念が強い。二人ともビール好き。」

 

●大西

「西川さんはビール好きの人」

 

●釈

「たしかに、ビールがお好きな印象ですね!!」

 

●西岡

「あと二人とも(作るラーメンの)種類が多い。僕は一つ派。二人とも色んなもの好きで、知識も豊富。僕の知らんことなんでも知っている。」

 

●釈 >> 西岡

「西岡さんのコメントがちょいちょい面白いです(笑)」

 

●大西

「西岡津世志さんはいつでも笑顔の人、です。」

 

●西川

「印象、最初と今は違うかも。西岡さんは勢い➡勢い&クレバー。大西さんは芸能人➡純粋&カリスマ性。カリスマ性なら西岡さんも相当やけど。」

 

●西岡 >> 西川

「僕はアルバイトと間違われるねん(笑)」

 

●釈

「今気づきましたが、全員「西」ついてますね」

 

●西岡 >> 釈

「ほんまやー。」

 

●大西

「僕と西川さんってボストンでしかあったことないですね。」

 

●西川 >>大西

「NYでも会いました。(笑)」

 

●釈

「すんごいワールドワイドなトークになってきましたね!」


撮影:ラーメン荘 夢を語れ 一条寺


◆海外出店を考えたきっかけは?

●西岡

「一言で言うと興味。自分の限界を知りたい。もっと言うと2時間かかります。」

 

●西川

「元々、海外で働いてみたい、住んでみたいと言う気持ちがありました。それこそラーメン屋さんになる前から。」

 

●西岡

「僕は全くなかった。海外に興味すらなかった。」

 

●大西

「僕は、ラーメン店始める前から『アメリカに住む』っていう夢を持ってました。キッカケは映画『バックトゥーザフューチャー』を観てアメリカの雰囲気や文化に憧れすぎて。そして、大学生になった時にバックパッカーとして3ヶ月間放浪の旅をしました。」

 

●西岡

「二人とも海外好きですよねー」


◆Tsurumen Davis YouTubeチャンネル


◆その都市を選んだ理由は?

●西川

「僕は3週間くらいのアメリカホームステイの予定がテロで中止になって、それで(予定変更して)ヨーロッパを一人で廻ったので、そこからヨーロッパに。」

 

●西岡

「一言で言うと鳥肌が立ったから。若者相手にやりたくて、世界一の学生街を探してました。その流れでいろいろみて周り、ボストンの町に行った時に鳥肌が立ったから。日本の店でもそうですが、出店の時は鳥肌が立つかで決めてます。」

 

●大西

「僕は、7年前にアメリカに来てからここボストンにたどり着くまで、ハワイ2年、ノースキャロライナ1年を経て、ボストンに至ります。それこそちゃんと説明すると朝までかかりそう(笑)」

 

●西川 >> 大西

「ボストンは今、朝なのに(笑)」

 

●大西

「なかなかアメリカ3都市でお店オープンしてる人いないと思います(笑)。詳しくは著書『なぜ2時間営業だけでうまくいくのか』(光文社)を読んでもらいたいです(笑)」

 

●釈 >> 大西

「さりげない宣伝!鮮やか!(笑)」

 

●西岡 >> 大西

「僕は50冊買いましたが、店ですぐ全部売れました。」



◆それぞれの都市のラーメン事情は??

●西岡

「僕のラーメンはどこ行っても若者にターゲット絞ってるので学生ですね。30代も来てくれますが、基本20代前半。カップラーメンの文化が浸透してるのでみんなラーメンは知ってます。逆にラーメンはカップラーメンだと思われてた。」

 

●大西

「その質問は僕の中に答えがあって、アメリカでも大都市と地方都市では違いすぎて、僕たち日本人とは食文化の捉え方すら違いがあって理解できない部分もある。だから、僕もお客様に合わせにいくのをやめました。世界のどこへ行っても自分が美味しいと思うものを追求するだけです。」

 

●西川

「うちの客層は広いと思います。僕はラーメン屋がない街を選んだので、選択肢うちしかありません(笑)。ただ、車電車で10分の隣町にはそこそこあります。豚骨は多いですが、鶏白湯も結構あります。豚食べられない方多いので、鶏白湯も結構一般的かも。オランダ人も好奇心旺盛な人多いので、結構年配の方も興味持ってきてくれます」

 

●大西

「僕のお店の客層は年齢層めっちゃ高めです。逆に学生さんはかなり少ないです。ターゲットは常に自分(の年齢層)です。ただ、Yume Wo Katareさんがボストンで築き上げてくれたラーメン文化の恩恵はかなり受けてます。行列してくれるのもYumeのおかげで、理解が早かったです。」

 

●西岡

「ただでさえ食べるの大変なラーメン屋なのに、当初はみんな箸をさしたままずっと話してた。ラーメンは出来てから美味しくなくなるまでの時間が圧倒的に短いので、日本人は理解してます。黙って食べる食べ物です。」

 

●西川

「うちはまだ回転早いですが、それでも日本人と比べると食べるスピードは遅いですね。ただ、こっちの人はほとんどの人が汁まで飲んでくれる。」

 

●西岡

「今は、ボストンでは全力で食べてますよ。調教しました(笑)。ボストンもスープ全部飲んでくれます。」


大西店主(撮影:2012年冬)


◆各国で好まれる味、壁に当たったことは?

●西川

「味とかに壁はないです。こっちにきて自家製麺になったので、麺の太さだけは結構考えてました。自分で厨房立つ場合は、現地に合わせるとかと言う感覚は必要ないと思いますよ。」

 

●西岡

「文化は作るもの。味は常に周りに合わせず、自分の好きなものです。現地の人がやると変わります。壁はさっきの話で、箸さして(お客様同士で話していて)食べない。彼らにとって食事はコミニケーションの場。箸さして(ずっと話しているので)食べきれず、持って帰るって言う(笑)」

 

●西川

「つけ麺だけはぶっかけたがります(笑)」

 

●西岡

「ニューヨークのせたがやさんのお客さんはみんなつけ麺のつけ汁を麺にぶっかけてた。」

 

●釈

「スープあとがけスタイルのラーメンがスタンダードになる日が来るのかも知れないですね(笑)」

 

●西川 >> 釈

「元々のつけ麺の生まれ方もそれに近いもんですからねー。否定してるともったいないとも思います。」

 

●西川

「最近は(現地に)合わせるとかではなく、新しい形として捉えると言う感覚もあります。それでご当地ラーメンが生まれる。」

 

●大西

「こっちでは、カップルでラーメンデートで来られるお客さんも多い」

 

●西岡

「話戻しますが、箸さして話している問題。食べ切った人にだけグッジョブって言ったらみんな食べきるようになりました。これは本当に効果的でした。」


◆「麺を啜る」のは? 食べ方の違いは?

●西岡

「フォークを欲しがります。あんまり意識しないです。うちの麺は元々啜れない。」

 

●西川

「流石に啜れる人は少ないです。オランダは98%くらい箸を使って食べます。」

 

●西岡 >> 西川

「オランダで箸文化ありそう。」

 

●西川

「子供でも使える子多いです。たまに上手じゃない人に『フォークいりますか?』って言うと、NOと言われます。トライしたいって。」

 

●大西

「アメリカでも、都会の人は啜り出してます。田舎はまだまだ啜り出さないと思います。」

 

●大西

「ボストン、ニューヨークは箸は98%で、ハワイやノースキャロライナでは80%くらいです。」

 

- 啜り方ですが、音は控えめ?

 

●西岡

「日本好きのアメリカ人がめっちゃ音出します。漫画の影響!」

 

●西川

「漫画の影響は凄いですよねー。日本語は大体漫画で覚えています。」

 

●釈「漫画の影響なんですね、すごい!」

 

- 西川さんのお店、アジア系のお客さんが多いんですか?

 

●西川

「アジア人多いです。うちのお客さんだと7割オランダ人(欧州)。2割中国系。1割日本人。」

 

●西岡 >> 西川

「日本人はデルフトいるイメージがない。初めは『どこ?』って思ったし(笑)」

 

●大西 >> 西川

「日本人1割もびっくりです。ほとんど日本人がいない印象でした。うちは、たぶん日本人1割もいないです。」

 

●西岡

「うちは(日本人客が)元々は多かったけど、僕が店に出なくなってから極端に減ってると思います。」


西川店主(撮影:2012年冬)


◆ラーメンが世界共通語になってきているように感じますが、海外にいる皆さん目線ではどう感じていますか?

●西川

「共通語と思います。」

 

●西岡

「みんな知ってるけど、食べてるのはまだまだ一部だと思います。」

 

●大西

「はい。まだまだ、ラーメンは日常食にはなってないですね。ピザやメキシカンのように。」

 

- ラーメンの発音は?

 

●西岡

「リャーメンって発音。」

 

●西川

「意識したことないけど、意外とラーメンって言ってるかも。Ramenってオランダ語で『窓』と同じスペルなんですよ。」

 

●西岡 >> 西川

「それは食べられないね(笑)。窓食べに行こうって(笑)」

 

●大西 >> 西川

「お店の窓にRamenって書いたらえらいことやん?(笑)」

 

●西岡

「ほんまやー(笑)。違和感なさすぎる。というか、『(窓くらい)知ってるわい』ってなる(笑)」

 

●西川

「看板に丼の絵とjapanese noodle restaurantとは書いてるので。あと、カタカナや日本語も。」

 

●西岡

「僕もうどん屋の方のメニューはぶっかけうどん専門にしようと思って、メニュー名『ぶっかけ』にしようとして女性メンバーから白い目で見られた。それはまた大西さんに手伝ってもらって、文化作りました。」

 

●大西 >> 西岡

「Cold Udonが根付くまで、大変でしたね。勉強になりました。」

 

- うどん屋はラーメンよりずっと少ないですよね。

 

●西岡

「はい。でも増えてきました。うどんはみんな知ってるけど『所詮うどんでしょ?』みたいな美味しいイメージをみんな持ってなかった。スーパーに売ってるうどんや、日本食レストランで食べるうどんのクオリティだと思われてた。」

 

●西川

「こっち(オランダ)は中華とかアジア系レストランで麺を選ぶのに、うどん選べたりします。」

 

- 日本の食文化の重要な1つなのに、香川に食べに来ている外人いないですもんね。

 

●西岡

「香川にうどん食べに行っている外国人あまりイメージないですね。」

 

- アメリカでもうどんブームが来たら、香川も外人ツアーに入るかも

 

●西岡「絶対なりますよ!」

 

- セルフは外人受けすると思うんです。

 

●西岡

「それはそうでもないような。日本人の方が向いてます。」

 

●西川

「セルフの天ぷら、受けると思いますよ。ベジもいけるし。『セルフ』より、『選べる』やと思います。」

 

●大西

「みんなカスタマイズが大好きですね。」

 

●西岡

「それはすごくある。細かいし、みんなちゃんと主張してきはります。」

 

●大西

「それでいうと、うちはかなり大変です。うちは硬めも大盛りも替え玉も断ってるので。」

 

●西岡

「お客さんは(替え玉と)言いたい。日本文化知ってるねんって感じです。」

 

●大西

「それ!(替え玉と)言いたいだけ(笑)。でも、それ博多ラーメン文化だから!」


◆海外出店を夢見ている日本のラーメン店主に向けて、何か言葉をかけるとしたら??

●西岡

「行ってから考えて!儲かると思って行かない方がいい。困難が好きな人にはもってこいです。日本でうまく行って面白くない人。日本でうまく出来ないのに海外ではうまくいかないです。あまり否定はしたくないので、とりあえず行ってから考えて、です。」

 

●大西

「その通りです!困難が好きで、日本ではもう刺激がないという人。その困難ごと楽しめる人。どうしても海外に住みたい人。」

 

●西岡

「どんな問題来ても、おーそう来たか!みたいに喜ぶタイプ」

 

●西川

「西岡さんの意見そのまんまですねー!驚くほど簡単な気もするし、驚くほど大変な気もする。何にストレス感じるかわからないので、一度来てみるのはいいと思います。」

 

●西岡

「日本で結果作ってる人からすると、実は店を開けるまでが大変で、そのあとはむしろ簡単。日本で結果作ってない人はお金あれば作るまでなんとかなるけど、結局結果作れず帰ってしまう。」

 

●大西

「アメリカで店をオープンするのは、時間も労力もお金も日本の3倍はかかります。」

 

●西岡

「自分で店出てるかどうかがめちゃくちゃでかい。店の中にいる分にはほぼ不自由は感じない。」

 

●西川

「多分、暮らすと、店だけでなく諸々の手続きだったり、意図が伝わらないことだったり、パートナーのストレスだったり、ラーメン屋として苦労することじゃなかったりする場合が多いと思います。」

 

●大西

「オープンしてからも、法律の違い、言葉の壁、文化の壁はあります。ただ、美味しいものに国境はないので、味作りはみなさんが想像してるよりは問題なくできます。」


◆今後の展開は? 大事にしていることは?

●大西

「1000日後のことは、1000日後考えます。今を楽しむ毎日です!

ラーメン店主として大事にしてることは、ラーメンを毎日食べること。そして、毎日食べるためには、自分が食べてみたいラーメンにチャレンジすることです。」

 

●西岡

「今年の7月で飲食業、ラーメン屋からも引退します。全国、全世界に夢を語るラーメン屋『夢を語れ』はこれから全国全世界に増やし続けますが、僕は主戦場をサイバー空間に移します。ネットの世界で何億人にも夢を語ってもらい、夢に向かって生きれるサービスを作ります。」

 

●西川

「今後は日本の若者をこっちに連れてきたいです。彦根の店とオランダの店とも繋げたり。漠然と色々していきたいですねー。好きなラーメンを作る。町のラーメン屋。」

 

●西岡

「ラーメン店主として大事にしてることは、自分が一番大好きなラーメンを出すこと。」

 

●大西

「今、乾麺にチャレンジしてます。生麺には生麺の良さ、乾麺には乾麺の良さがあるかと。」

 

●西川 >> 大西

「手軽に家で食べられるようになれば、まだまだ広がると思います!」

 

●西岡

「日清フーズの社長と、マクドナルドの社長にもなりたい!」

 

●釈 >> 西岡

「具体的!」

 

- 以上ですね。今後の皆様の道がどの方向へいくか楽しみです!

ありがとうございました。


  (取材・文・写真 KRK 令和2年4月27日@Facebook)