Vol.230:麺や 川


 近年多くの注目店が集まってきて三重県屈指のラーメン激戦区となりつつある松阪市に、2021年7月に新たなお店が加わった。屋号は「麺や 川(せん)」。すぐに話題になって早くも行列ができるほどの人気店となっているようなので、共通の知り合いを通して取材をお願いした「麺や 川」川上店主にKRK直撃インタビュー!


- ご出身は?

「和歌山県の新宮市です。高校卒業してから就職で鈴鹿市(三重県)に出てきました。」

 

- 昔からラーメンは好きだったんですか?

「新宮にいた頃からラーメンは好きで、都会に行くと行列ができるラーメン屋とか行っていました。」

 

- ラーメン屋をしたいと思い始めたのは?

「実は15年前くらいからラーメン屋をやりたいと思っていたんです。しかし大手企業に勤めていて仕事はきつかったんですけど収入が良かったんです。だからそこから離れて自分でラーメン屋をするというのがリスキーだと思って、なかなか決断できなかったんです。」

 

- 約15年が経って、決断したきっかけは?

「このまま自分がしたいことをやらないで人生終わっていいのかなと思いました。それでやってしまおうと2年前くらいに決断しました。」

 

- ラーメン屋をしてみたいと特に影響を受けたお店は?

「支那そばやさんとか、三重県だと鉢ノ葦葉さん(当サイト記事)。あっさりした中にも旨味が詰まっている感じで、そういうラーメンが凄く好きでした。」


- ラーメン屋をやりたくなってからは?

「家でラーメンを作るようになって、1年間ほどずっと自作を続けていました。そして実際にラーメン屋で働いてみないといけないなと思いました。それで三重県津市の博多一丁さんに電話しました。」

 

- 博多一丁を選んだ理由は?

「何度か通っていて博多一丁さんの味だけでなく経営面とかが凄いと個人的に思っていたので、店主さんに電話をしました。その時に店主さんが僕の年齢や現在の仕事とか聞いて『なんでウチで働きたいの?』と聞いてきたので、経営のことなど僕が(博多一丁を)選んだ理由を全て説明しました。それで面接をしてもらえることになりました。」

 

- 面接では?

「面接で博多一丁さんの経営関係の書類とかも見せてくれたんです。『なんで僕にこんなに?』と思ったんですが、店主さんは僕の博多一丁さんを選んだ理由がとても嬉しかったとおっしゃってくれました。その時に店主さんから『アルバイトしたり働いたりするのは1番じゃないかもよ? 修行したお店に恩義ができるから、店の場所や商品の内容とかいろんな問題が出てくる。今はラーメン学校とか行って修行せずにする人も多い。それでやったらどうや?』とアドバイスを頂きました。」

 

-  近年は修行無しで独立開業する人も増えてきていますからね。

「はい。三重県だと大和ラーメン学校が多いとか色々教えて頂きました。それからしばらく経って僕が食品衛生責任者の資格を取って博多一丁さんに報告したら、その時に僕が本気だと伝わったんだと思います。『一流会社に勤めている人がラーメン屋をするなんて考えられない』とびっくりされました。それから営業時間外に店に呼んでもらって、色々学ばせて頂きました。」

 

- 博多一丁で色々教わって?

「ラーメン屋をしたいという気持ちがさらに高まりました。それと博多一丁さんにお世話になっているので豚骨だけは出さない。そしてなるべく離れたところでしようと思いました。」

 

- ラーメン学校にも行ったんですか?

「三重県では大和ラーメン学校で学んだ人が多いんですが、僕はネットで見て良い感じだったので東京の『食の道場(公式HP)』で学ぶことに決めました。合宿所で7日間泊まり込みのコース。食の道場では毎日スープを炊いていろんな系統のラーメンを学ばせて頂きました。」

 

- 学校を終えてから独立開業へ向かうんですね。

「はい。物件は鈴鹿市、津市、松阪市でだいぶ前から探していましたがなかなか見つからなかったですね。」


◆2021年7月1日オープン


- 屋号の由来は?

「自分の名前が川上なので『川を使いたいな!』と思いました。川の違う読み方で何か良いのがあるかなと妻と話していて、センという読み方の響きが良かったので決めました。」

 

- 自店で提供する商品は悩みましたか?

「清湯でやりたいという想いはずっとありましたが、かなり悩みましたね。食の道場で色んなラーメンを学びましたし、交流のある『すぐれ』高松店主(当サイト記事)も『白湯の方がスタートダッシュがいいし安定すると思う』とアドバイスしてくれていました。」

 

- 「すぐれ」高松店主と知り合ったのは?

「共通の友人がいるので高松店主にはオープン前から色々相談に乗って頂きました。そしてその繋がりから春日井市のラーメン屋の皆様にもお世話になっていますし、妻も春日井市の『女将の会』に参加させて頂いています。」

 

- 最終的に清湯を選んだ理由は?

「本当は清湯がしたいのに成功するために白湯で始めて、それでもし失敗したら後悔しか残らない。それだったら清湯だけでやりたいと思いました。ギリギリまで凄く悩みましたね。僕はそんなに器用じゃないので両方するという選択肢はありませんでした。」

 

- 清湯と決めてからオープンまでは?

「学校で教わったことから自分が余分かなと思うモノをどんどん引いていきました。一部のは完全に引かずに隠し味程度に効かせたり、必要と思うところはグッと上げたりしていました。醤油選び、塩選びには凄く時間をかけました。日本中からいろんな醤油や塩を取り寄せて試作を繰り返していました。鶏もいろんな丸鶏や鶏ガラを仕入れて研究しました。物件を決めてから1ヶ月半ほど店の中で自作を続けていました。」

 

- お客様へ向けて、商品の紹介をお願いします。

「鶏そば しょうゆは醤油を5種類使用しています。醤油感をしっかり出したくて醤油を濃いめにしています。鶏そば 塩は2種類の塩を使っていて、見た目よりかなり濃厚な味に仕上がっています。麺は多加水で啜りがいい細麺がスープとの相性もいいと思いました。そして(麺は)際どいラインの柔らかめに仕上げています。トッピングはなるべくシンプルにしたいと思い、ノーマルのは鶏チャーシュー、豚チャーシュー、穂先メンマ、ネギだけにしました。」


◆鶏そば 特製しょうゆ


- そして遂に7月1日にオープンしました。

「オープン前からInstagramで開店までの進行状況を投稿したんです。それを見てくれていた方が多かったようで想像を絶するほど多くのお客様に来ていただきました。びっくりしましたね。あまりにも反響が大きかったので戸惑う部分がありました。仕込み分だけするのも精一杯でとにかくしんどかったですね。妻が参加している春日井市の『女将の会』の皆さんが来た時は妻が何故か泣き出すし、本当に2人とも必死でした。」

 

- 今後は?

「つけ麺とか色んなことを考えています。三重県では鉢ノ葦葉さんが今はほぼ塩(塩ラーメン)だけで営業をしていてどんどんレベルを上げていっている。自分はそういうスタイルに憧れています。」

 

- 川上店主の大事にしていることは?

「丁寧さです。仕込みから全てにです。体はしんどいですけど、掃除も『そこまでしているの?』というほどしています。『全部丁寧に、丁寧に』とやっています。」


◆店舗情報

麺や 川

三重県松阪市石津町311-2

twitter:https://twitter.com/yuki19811216

instagram:https://www.instagram.com/menya_sen_rarmen/

オープン日2021年7月1日

 (取材・文・写真 KRK 令和3年9月13日)