
今回取材するのは2025年7月6日に尼崎市でオープンした新店「猿でもわかるわ」。家系の人気店「武双家」の店主をしていた方の独立店ということで、オープン前から注目度はMAXでずっと気になっていたお店だ。オープン日以来ずっと大行列で多忙な中、取材する時間を作っていただいた。「猿でもわかるわ」安子店主にKRK直撃インタビュー!
- ご出身は?
「元々は尼崎で生まれて、幼少期から高校頃までは神戸にいました。16歳頃から大阪で一人暮らしを始めました。」
- ラーメン屋をするまでの経緯は?
「16歳頃から魚屋さんで働いていました。魚屋上がりの親方がしている生簀専門店でした。その頃は『このまま海鮮で店を持つことになるのかな』と考えていました。そのお店で勤めて14年ほど経った頃にコロナ禍もあり『この先、居酒屋業態をしてもいいのか?』と考えていた時に、アメリカのラーメン屋で働いていた友人がたまたま日本に帰ってきていて、僕に『それやったらラーメン屋をやりましょうよ!』と言ってくれたんです。」
- その時の気持ちは?
「まだ何をしていきたいか全く選択肢が無かった頃で、『ラーメン屋か。考えたことがなかったな』と思って、それからラーメン屋に興味を持ち始めました。」
- ラーメン屋に興味を持ってからは?
「それきっかけで色んな店へ食べに行くようになったんですが、一番大きかったのは吉村家のYouTubeを偶然に見たことでしたね。吉村家のこともまだ知らなかったんですが、その頃YouTubeにあの有名な動画がよく流れてきていたんです。それを見た時に『これや!』と思いました。『家系って何や?』というところから興味を持ち始めましたね。それでとりあえず家系ラーメン屋で働いてみたいなと思いました。」
- 色々探したんですか?
「最初は教道家という近大前のお店に連絡したら『人手足りています』ということだったんですが、『姉妹店の武双家なら空いてます』と紹介してもらいました。その時はまだ武双家のことは知りませんでしたね。」
- 初めてラーメン屋で働いてどうでしたか?
「やったこと無い事ばかりだったのでもうワクワクでしたね。店炊きというのが凄く魅力的だなと思いました。それから2年くらい経った頃に店主として店を任せてもらうようになりました。」
- 独立志望はあったんですか?
「ぼんやりとですが『いつかは自分の店を持ちたい』とは思っていました。当時は『系列店でもいいし、武双家をそのまま任せてもらってもいいし、どちらでもいいな』と思っていました。でも、やっぱりキャリアを重ねていく内に次のステージに行きたいと思うようになりました。」
- 武双家では何年いたんですか?
「3年店主をして合計で5年間です。当初は3年で目処を付ける予定だったんですけど、なかなか目処が付かなかったので5年経った時にここやと思って動き始めました。」
- その時には次のことはある程度決まっていた?
「いや、これがまた行き当たりばったりで(笑)。何も決まっていない状態で独立宣言をして、来年の秋には店を出すぞと周りには言っていました。」
- 人気店から離れることへの不安は?
「今年の一月下旬に武双家の14周年として無鉄砲さんとコラボをさせて頂いたんです。もう独立を宣言していたので最後の周年で何を作ろうと考えた時に、自分の好きな無鉄砲のラーメンを作りたいと思いました。武双家のムって武士の武じゃないですか。武士の武に鉄砲で"武鉄砲"って限定をしようと思いつきました。それを出すにあたって無鉄砲さんからの許可をもらわないと何をやっているねんとなるじゃないですか。だから無鉄砲の奈良店と大阪本店に行って『これをしたいんです』と相談し、赤迫さんから直接電話で許可を頂きました。当日も赤迫さんや無鉄砲の店主さん達総出で来て頂きました。そして、このイベントの時にお客さんの楽しんでくださっている様子とか見ていて一抹の不安が一気に消え去って、今年勝負をかけようと背中を押してくれました。」
2025年7月6日オープン

- 自店の場所は尼崎周辺とかに決めていたんですか?
「当初は大阪で探していました。僕は裏路地でも繁盛できると自信があったんですが、テナントの顔、玄関の顔だったりがなかなかしっくりくる物件が無かったんです。そんな中、この物件が出る前に情報が流れてきて、ここを見に来た瞬間にココやと思いました。規模もピンポイントでした。僕は吹田でしていたので、そのお客さんも大阪から来やすいし、地元の神戸からも来やすい場所です。」
- 屋号「猿でもわかるわ」の由来は?
「商品より屋号を先に決めていました。5、6年前から店をやるなら"猿でもわかるわ"でしたいと思っていました。関西のラーメン屋って"歴史を刻め"とか"人類みな麺類"とか名前がユニークなのが特徴と思いました。だから麺屋安子とかじゃなくて何か文章チックな屋号がいいなと考えていました。略しても親しまれやすいネーミング。"猿でもわかるわ"だったら皆さんが"猿わか"と略してくれています。」

- 自店の商品を家系ラーメンにしなかったのは?
「もう何番煎じやねんってなるので(笑)。今から家系という土俵で勝負したところで埋もれてしまうなと思ったんです。家系の基本、店炊きって色んなものに応用できるのでそれを活かしてやりたいなと思いました。」
- 自店の商品はいつ頃に決まりましたか?
「自分が店をする時は潮豚骨ですると一昨年の8月から決めていました。」
- 潮豚骨をメインに決めた理由は?
「潮豚骨というジャンルがそもそも無いと思ったんです。限定とかではあるんですけど、それを名物として謳っている店は無いと思いました。この路線で勝負したら競合もいないのでいけるんじゃないかと思いました。」
- 「潮豚骨ラーメンUMI」とか個性的なメニュー名を付けた理由は?
「お店をやるぞと決まってから考えました。潮は文字通り、海の素材、昆布や秋刀魚節、帆立などを使って出汁を取っています。潮という漢字を使っているのも磯のイメージを持ってもらいたいからです。醤油のYAMAは完全に豚なので、青菜とか山の素材が乗っています。醤油に合うように山椒、「山のものには山のものが合いますよ」とお客さんに呼びかけています。パッと耳に入る方がお客さんも憶えてくれるかなと思ってUMIとYAMAにしました。落ち着いたら限定ラーメンSORAも出したいですね。」
- 安子店主が一番大事にしていることは?
「自分を過信しないことですね。常にお客さんに『この味いけますか?今日のラーメンいけますか?』とか聞いています。指標は全てお客さんです。美味いから食えというスタンスもいいと思うんですけど、僕はやっぱりお客さんに直接聞いています。地道なやり方なんですけど、僕はそれが商売にとって一番大切だと思います。」
◆店舗情報
猿でもわかるわ
兵庫県尼崎市立花町2-2-2
X https://x.com/ra_men_saruwaka
https://www.instagram.com/ra_men.saruwaka
オープン日:2025年7月6日
(取材・文・写真 KRK 令和7年7月19日)