Vol.55:麺や 福はら

オープン直前インタビュー


 2017年7月21日、関西のラーメンファンが待ちに待った新店が遂にオープンする。オープン前からこんなに話題になる新店は久しぶりだ。屋号は「麺や 福はら」。場所は大阪市生野区。店主は東京の名店「麺屋一燈」出身。現在の日本ラーメンシーンにおいて、名実共にトップ中のトップと位置付けされている名店だ。

 私自身は今日までの経緯を全く知らないので、注目の新店情報が突然入り驚いた!東京の超人気店で多くの経験を積んできた店主は、大阪でどんなラーメンを提供していくんだろう?店主とは初対面なので、過去、現在、未来、いろいろ聞きたいことがある。「麺や 福はら」福原店主にKRK直撃インタビュー! 


- 出身は?

「大阪です。」

 

- ラーメン業界に入るきっかけは?

「元々はmixiなどでラーメンブログをずっと書いてた所謂ラヲタでした。約5年前までは転々と新店とか限定を狙いながら食べ歩いていました。当時、『まるとらさん(既に閉店)』や『而今さん』、『かしやさん』とかによく顔を出していて、そういう繋がりもあり脱サラしてラーメン業界に入ることに興味を持ちました。」

 

- 興味を持ってからは?

「その頃に島田さん(而今店主)と親交の深かった麺屋一燈の坂本さんと知り合いました。東京の大つけ博に而今さんが参加した時に僕もお手伝いで行っていたんですが、その時に坂本さん(「麺屋一燈」店主)もヘルプに来ていて、その期間中に一緒にご飯を食べる機会があったんです。その時に坂本さんが『もし本気でラーメンやるならウチにおいでよ』と誘って下さいました。」

 

- 坂本さんから直々に誘われたんですね。

「自分も本気でラーメンをしたかったし、地元でパッと始めるよりは、もっとしんどい思いをしてから出したいと思いました。それに『東京の技術を地元に持って帰りたい』という気持ちもありました。それで麺屋一燈でお世話になることに決めました。」


- 一燈で働き始めて?

「本店も含めて、全店舗で働かせてもらいました。アルバイトとして而今さんとかでお手伝いをしたことはありましたが、飲食の経験はほぼ一燈での経験だけですね。全くの素人から始めましたから。」

 

- 最初から独立志望を伝えていた?

「入った時に『3年で独立したい』という気持ちを話したら、『3年で独立できるかは自分の努力次第だよ』という返事がありました。それから3年後の自分のビジョンを考えながら、1年目はこうしないといけない、2年目はこうする、3年目にはこうする、と3年先の独立を見据えてやっていました。」


- 一燈から独立のきっかけ?

「ある時、坂本社長と面談する機会があり、『君は今後どうするの?』と聞かれたので、やはり大阪でお店をしたいと思っていたので『大阪で独立したいです』と伝えました。それからしばらく経って、社長から独立の許可が出たので、大阪で独立する事になりました。」

 

- グループへ残るという選択肢は?

「大きいグループに残っている方が安定するとは思うんですけど、自分の人生が変わった最初のきっかけが、地元の発展と貢献のためにラーメン屋をしたいということでしたから。そこがブレると自分自身の人生もブレる気がしたので、しんどくても独立を選びました。」



- 場所は?

「ここら辺が地元なんで、この場所でしか考えていなかったですね。GW明けくらいに大阪へ戻ってきました。場所は社長から昨年末に独立をOKもらってから、不動産屋にずっと探してもらっていました。なんだかんだで5ヶ月ほどかかりましたね。」

 

- 提供するラーメンは悩みましたか?

「一燈時代に多くの限定を自分でやらせてもらっていました。3年間限定をやり続けていく中で、自分の出したい味もほぼ固まっていました。試作も材料、お肉屋さんとかも迷うことなく段取りできました。」

 

- 「麺や 福はら」で提供するラーメンは?

「スープは大和肉鶏という奈良の地鶏オンリーのスープ。一燈時代から奈良の業者さんと懇意にさせて頂いていました。一燈時代、近畿にも美味しい地鶏があることを知って欲しくて、大和肉鶏を使って"俺の大和"という限定をしたらとても評判が良かったんです。自分で食べても毎日でも食べ続けられる味だし、突き抜けてる味だと思いました。なのでそれを軸にしようと決めました。」

 

- オープン時に提供予定の商品は?

「大和肉鶏の清湯で、醤油と塩。それに一燈の濃厚鶏白湯魚介のラーメン。この3種類でやっていこうと思います。」



- 話題の新店なので、行列対策も大事になりますね。

「クレーム対策を一番最初にしたんです。駐車場と並びのクレームですね。駐車場のクレームは向かいのパチンコ屋さんに挨拶に行き、色々と相談しながら出来るだけクレームに発展しないように心掛けました。並びのクレームについては、近隣の人にお願いして『邪魔にならない程度で前に並んでいいですか?』と聞いたらOKを貰えたので安心しました。オープンしてから並びや駐車場でクレームが来ると、ずっと引きずるので先に動きました。」

 

- 地元への想い?

「あまり"今里"自体を知ってる人はいないですよね。近鉄沿線でも知らない人がいます。もうちょっと今里という町を、ラーメンを通じて知ってもらえたらいいなと思っています。ラーメンっていろんな可能性があると思うんです。ここが盛り上がって駅の乗降人数が多くなって、商店街が活気出たらってのが理想ですね。」

- 師匠である坂本社長からの色紙について聞かせてください。

「"巧詐は拙誠に如かず"と書いて頂きました。『口先や小手先で巧くやるよりも、真摯に心を込めたことをする方が相手には響く』という意味です。僕は東京で巧い事言って常連さんにリピートして貰っていたりしたので。でも独立すると決まってから、坂本社長からは『昔はそういうことができたけど、今後はそういう事よりも真摯にラーメンを作ってお客さんと向き合いなさい』という意味合いも込めて頂きました。」

 

- 「麺や 福はら」へ来店予定のお客様へ一言。

「東京は無化調の店が増えてきているんですけど、大阪ってまだ無化調が増えてきていない。そんな中でも近隣ではumamiさん、丿貫さん、和海さんとか無化調でやられています。今後、もっと化学調味料に頼らないラーメンが増えていって、もっとラーメンに興味を持つ人が増える環境になればいいなと思います。そして僕の修行店である"麺屋一燈"を知らない人も知ってる人も食べに来て欲しいです。イメージは創業当初の一燈の清湯です。"麺や 福はら"を通して修行先の店のことも知ってもらいたいという想いもあります。」


2017年7月21日オープン


<店舗情報>

麺や 福はら

大阪府大阪市生野区新今里5-1-8

Twitter: https://twitter.com/fukuhara51k

オープン日:2017年7月21日

(取材・文・写真 KRK 平成29年7月)